中村知春、GM兼任で東京金へトライ!クラブチーム立ち上げ国内女子ラグビー盛り上げる

[ 2020年5月10日 05:30 ]

Challenge 春――新たな挑戦

中村知春
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 7人制ラグビー女子日本代表の中村知春(32)は、昨年12月に新たな肩書を加えた。自ら構想し、創設へ奔走したクラブチーム「ナナイロプリズム福岡」のゼネラルマネジャー(GM)兼選手だ。主将として臨んだ16年のリオデジャネイロ五輪では、目標の金メダルに及ばず1勝4敗の10位。その後、味わった虚無感が新たな挑戦への原動力となった。 

 監督やコーチ兼任はまだしも、GM兼任のアスリートはサッカー・カンボジア代表GMの本田圭佑と、この人くらいか。2度目の五輪を目指す一代表候補として、ただでさえ一点集中を求められがちな立場ながら、中村はあえて、自ら困難な道へと足を踏み入れた。

 「構想を1年近く温めて、昨年12月に実現させました。発端は女子ラグビーをもっと日本国内で盛り上げたいという思い」

 実はこの思い自体は、リオ五輪前から変わっていない。五輪金メダルが、その起爆剤になると信じて疑わなかった。だからこそ拘束期間が年間250日とも言われる厳しい代表合宿を耐え抜き、国際大会で思うような結果を残せなくても、金メダルの目標はブレなかった。だが結果は残酷。「死ぬほど頑張って人生を懸けてきて、結局何も残らなかった」。4年前の“失敗”を経験し、別の方法で女子ラグビーを盛り上げるという目的を成し遂げる。そのために選んだ方法が、新規クラブの立ち上げだった。

 福岡は元々、ラグビーが盛んな土地柄。一方で女子の場合は大学やシニアレベルの受け皿がほとんどなく、トップレベルの選手が関東や関西へ出ていく流れが通例だった。昨年まで3年間、北九州市で行われていたワールドラグビー女子セブンズシリーズに出場していた中村は、そうした現状を地元の関係者から異口同音に聞いていた。生まれも育ちも神奈川県ながら、「本当の意味で応援されるチームをつくりたい」と考え、福岡に根を張ることを決めた。

 創設までの1年間は代表活動の合間を縫って福岡へ足を運び、協力者やスポンサーなどとの会議や交渉に奔走。「葛藤はあった。選手として大事な時期に、新しいことを始めるべきかと」と悩みながらも、プレースタイル同様、体を張って突き進んだ。コーチング資格を取得していたものの、自らGM兼任を選んだ理由も「代表を通じて、一番大切なのは計画だと思ったから」。練習環境などのハード面やスタッフの整備、そして現在はまだ6人という選手の勧誘もGMの業務。「時間的な両立が一番大変」と言うが、心は充実感に満ちあふれている。

 新型コロナウイルスの影響で1年延期となった東京五輪は、「この状況を乗り越えて開催されれば、歴史的に見ても一番大きな意味を持つ五輪になる」と捉えている。延期決定直後は「あと4カ月がリセットされた。自分自身の年齢もある。ちょっと複雑だった」というが、今は「メダルに到達できる時間をもらえた」とポジティブに捉えて日々を送る。

 当初の代表活動計画もリセットされ、現在はテレワークと個人トレーニングを中心に一日を過ごす。年間の3分の2を占めていた代表活動が消えたことで、「凄く恵まれているのに、当たり前と思っていた部分があった。これ(コロナ禍)を経験した上で代表活動が再開できれば、ありがたみを理解して戻れると思う」と言う。より強くなった女子ラグビー発展への願い、東京五輪への思いを胸に、大きな花を咲かす未来へ向けて汗をかく。

 【年内予定は白紙】3月中旬まで埼玉県熊谷市で合宿を行っていた7人制女子日本代表は、その後の予定をキャンセル。3月24日に東京五輪の延期が決まったことで、年内の全ての予定がいったん白紙に戻された。現状では今後の実戦機会も未定で、活動が正常化された後に、改めて計画されることになる。一方、五輪代表候補には昨年12月の発表で、トレーニングスコッドを含めて26人が挙がっている。リオ五輪代表は中村を含めて3人のみで、20代前半までの比較的若い選手が台頭。12人の代表を懸けて、約1年2カ月の争いが繰り広げられる。

 【自宅で球根植え】一日のほとんどを自宅で過ごす中、中村が最近始めたのが「球根を植えること」だという。その目的について「球根はいつか花を咲かせる。未来に向けてワクワクが持てるものを育て、チームとしてスポンサーさんなどにプレゼントしてはどうかと話し合い、テストの意味を込めて育てている」という。他にも「これまで鍛えていなかった部分を鍛えている」とし、足の指などを強化。他競技のトレーニング方法も勉強し、競技力向上にも励んでいる。

 ▽ナナイロプリズム福岡 19年12月創設。一般社団法人「Nanairo Lab」が運営し拠点は福岡県久留米市の久留米大。ヘッドコーチは16年リオ五輪男子日本代表主将を務めた桑水流(くわずる)裕策(コカ・コーラ)。メンバーは中村のほか、東京五輪代表第2次候補の横尾千里、同トレーニングスコッドの白子未祐ら。

 ◆中村 知春(なかむら・ちはる)1988年(昭63)4月25日生まれ、神奈川県出身の32歳。法大までバスケットボールに打ち込み、卒業前に7人制ラグビーを始める。11年、7人制代表に初選出され、12年から同主将。13、18年W杯セブンズ、16年リオデジャネイロ五輪に出場。18年アジア大会では金メダルに貢献。15人制代表歴もある。ポジションはFW。1メートル62、64キロ。電通東日本に勤務。

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