世界最小・最強セッターの新たな挑戦 竹下監督「五輪でメダルを争う選手を」

[ 2016年6月11日 10:45 ]

新クラブチーム「ヴィクトリーナ姫路」の監督就任を発表した竹下佳江さん

 バレーボール女子のロンドン五輪銅メダリストで日本代表のセッターとして長年活躍し、13年に引退した竹下佳江さん(38)が、Vプレミアリーグ入りを目指して兵庫県姫路市を拠点に発足した新クラブチーム「ヴィクトリーナ姫路」の監督に就任した。7日に行われた就任会見では、「監督」と呼ばれることに「こそばゆいです」と照れくさそうだったが、「日本一を目指したい。五輪でメダルをかけて戦う選手を輩出したい」と早速、大きな目標を掲げた。

 近年、女子バレー界は女性指導者が結果を残している。口火を切ったのは元日本代表セッターの中田久美さん。イタリアなどでコーチ経験を積み、12年にVプレミアリーグの久光製薬の監督に就任すると、初年度にリーグ制覇など3冠を達成した。続いたのはアテネ五輪日本代表主将の吉原知子さん。現役引退後、指導者を目指して筑波大大学院で学び、昨年6月に下部のVチャレンジリーグ・JTの監督に就任すると、1年でチームをVプレミアリーグ昇格に導いた。竹下さんは「道を作ってくれたのは中田監督。最初は女性が指導するのは大変だったと聞いている。吉原監督も(かつて所属した)JTを引き上げてくれた。素晴らしいことだと思う」と偉大な先輩2人に敬意を表した。まだ女性指導者の数そのものは多くないものの、活躍する土壌はできあがっている。

 ただ既存のチームの監督を引き受けた先輩2人と違って、竹下さんのチームは全くのゼロからのスタート。成功する保証は何一つない。現在、引退した選手や学生に声をかけて、選手集めをしている段階。今夏の全日本選手権兵庫県予選から出場し、17年秋から下部のVチャレンジリーグ2参入を目指しているが、どれだけ有能な選手、スタッフが集まるか、未知数だ。

 「正直不安もある。(チームが)あるところにポンと入る方がいいのかなとも思ったけれど、私らしくていいのかな。厳しいところからはい上がるのが私のモットーですから」

 竹下さんは日本が唯一五輪出場を逃した00年シドニー五輪予選で「1メートル59のセッターでは通用しない」と厳しい批判を浴び、一度は引退した。それでも再起して「世界最小・最強セッター」と呼ばれるまでになり、3大会連続で五輪に出場。12年ロンドン五輪では銅メダル獲得に大きく貢献した。ゼロからスタートは、幾多の困難を乗り越えてきた竹下さんのチャレンジ精神をくすぐるのだろう。

 引退後、プロ野球・広島の江草仁貴投手と結婚し、昨年5月に男児を出産した竹下さんは現在、子育てでも大忙しだ。「どうすれば(両立が)うまくできるか模索中です。母親となり、何かメッセージを届けられるんじゃないか、いろんなことを変えていけるんじゃないかとも思う」。かつてスピードと正確さを追求した竹下さんのプレーを見て、勇気づけられた小柄な選手は多かった。今度は指導者を志す女性、子育てしながらリーダーとして社会で活躍することを願う女性にたくさんの夢や希望を届けてほしい。(柳田 博)

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2016年6月11日のニュース