絶対負けられないのに…岸田首相　21日衆院補選島根1区入り「正直、ありがた迷惑だ」　

子ども政策に関する衆院特別委で答弁する岸田首相＝16日午前
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　衆院3補欠選挙（28日投開票）が16日、告示された。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件後、初の国政選挙で、自民は東京15区と長崎3区で独自候補を擁立せず不戦敗。唯一候補を立てた島根1区が、立憲民主党との与野党対決となる。“保守王国”でもある島根を落とせない自民は、21日に岸田文雄首相（自民党総裁）が応援に入る予定だが、地元は“逆効果”と迷惑がっている。

　絶対に負けられない戦い。島根1区の選挙戦初日に、自民は小渕優子選対委員長を投入した。錦織功政氏（55）の出陣式。小渕氏は支援者に向かって、裏金事件について謝罪。1000人以上が集まった島根県庁前での第一声でも「大変な政治不信を招いた」と頭を下げた。立民の亀井亜紀子氏（58）は約400人が見守る中、JR松江駅近くで選挙戦をスタート。辻元清美代表代行が応援演説に立ち「島根1区には、利権まみれの政治を変えたいという思いが託された」と呼びかけた。唯一の与野党直接対決の地で、いきなり“大物女性対決”が繰り広げられた。

　自民の清和政策研究会（現安倍派）の会長を務めた細田博之前衆院議長の死去に伴う補選。同派は裏金事件で批判の的となった。1996年の小選挙区制導入以降、県内の全小選挙区を自民が独占してきた“保守王国”だが、今回は苦戦している。

　選挙戦期間中、最初で最後の日曜日となる21日には首相が応援演説を予定。この日は記者団に「政治の信頼回復に向け、政治資金規正法改正などの取り組みを訴える」と語った。通常、現役首相の選挙区入りは願ってもないことだが、党勢の陰りを象徴する存在となった首相。当初、地元支援者には「首相が姿を見せては、かえって逆効果」と“拒否反応”があった。関係者によると「首相側が押し切る形で決まった」といい、今も党本部には「応援に来てほしくない」との声も届く。地元支援者は「正直、ありがた迷惑だ」と顔をしかめる。

　21日には立民の泉健太代表も島根に入る。応援演説では裏金事件だけでなく、首相の事件への取り組みも激しく責め立てるのは間違いない。両者のニアミスも考えられ、島根1区の流れを決める一日になりそうだ。

　補選の結果は、これまでの政権でも首相退陣の引き金になってきた。菅政権下で行われた2021年4月の衆院北海道2区と参院長野選挙区の両補選、参院広島選挙区再選挙で、自民は不戦敗を含めて全敗。党内に動揺が広がり、当時の菅義偉首相は党総裁選への立候補を断念し、退陣に追い込まれている。

　支持率が低迷し、尻に火が付いている首相。島根入りが吉と出るか凶と出るか、注目が集まる。