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元公安警察の新人作家 安倍元首相襲撃事件をモチーフにした小説で注目「今回の事件はその荷物を…」

[ 2023年4月20日 11:40 ]

本郷矢吹氏著「小説 日本の長い一日」

 岸田文雄首相が衆院和歌山1区補欠選挙応援のため訪れた演説会場で15日に筒状のものが投げ込まれ爆発した事件。和歌山県警は威力業務妨害容疑で兵庫県川西市の無職木村隆二容疑者(24)を現行犯逮捕した。安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に銃撃されて死亡した事件から9カ月。またしても多数の聴衆の目の前で政治家がターゲットとなった。元公安警察の新人作家、本郷矢吹氏は安倍元首相の事件に着想を得て書き下ろしたデビュー作「小説・日本の長い一日」(ART NEXT)が3月22日に発売されたばかり。注目の著者に話を聞いた。

 ――「小説・日本の長い一日」は安倍元首相の事件がモチーフとなった作品でした。フィクションとして書き下ろしたばかりの本郷さんにとって、現実に再び選挙応援演説を狙った事件が起きたことへの思いは?
 「率直に驚きました。安倍元首相の事件を機に警護要則が改定され、強化されましたが、それでも選挙での警護の難しさをあらためて感じました」

 ――なぜ安倍元首相の事件をモチーフに小説を書き始めたのですか。
 「たまたま今作の出版社の担当編集者と食事をした時、事件について入ってきていた情報を話したところ、そうしたことを踏まえた小説を書いてみないか?と声を掛けていただいたことがきっかけです」

――小説は政界を引退した元首相が息子の選挙応援をしている最中に銃弾に倒れるシーンから始まっていました。事件発生後の現場の様子が元警察官らしく生々しく描かれていました。今回の事件の現場について、そんな本郷さんだからこそ思うことを教えてください。
 「警護、警備は事件の教訓が生かされて改善されていくが、今回は金属探知機での検査や荷物検査がなかったのが残念だ。映像を見る限り、手ぶらでやってきた地元住民が多い中で容疑者はリュックサックを背負い、目立つような状況でした。『その荷物を見せてもらってもいいですか?』などの声掛けが必要だったのではないでしょうか」

――木村容疑者の人物像をどう捉えているか。
「逮捕後、警察で『弁護士が来てからお話しします』と言ったと伝えられました。どの報道を見ても『お話しします』と『お』が入っていました。普通なら広報発表で『話します』とするところ。わざわざ『お』があるところから、どのような人物なのか関心があった。一部の報道では昨年6月、参院選に立候補できなかったことへの不満が動機である可能性を指摘しているが、供託金や被選挙権の年齢を捉え『法の下の平等に反する』と提訴した話を聞き、思想や理念とは懸け離れたものを感じました」

――犯罪の背景に感じるものは。
「仮に訴訟の棄却を含めた立候補条件に不満があったとした場合、組織背景はもちろんないわけだが、こんな犯罪を敢行した人間が本当に人のために尽くす政治家になろうとしたことの方が驚きと憂いを禁じ得ません。今後、繰り返さないためにも警察は背景をしっかりと調べていってほしい。要人警護のシステムだけでなく、パイプ銃や手製爆弾など殺傷能力の高い凶器がSNSにより簡単に製造できることへの対策をどう講じるのかも課題です」

▽「小説・日本の長い一日」2022年7月、元首相が衆院選に立候補した長男の応援弁士を務めるため、マイクを握った直後に狙撃されて死去。この事件を機に警察庁外事課長、防衛省情報課長、警備責任者、元首相の息子、内閣情報調査室主幹、新聞記者…さまざまな登場人物の運命との闘いが始まった。公安警察出身の著者らしいリアリティーあふれる情報戦も描かれ「非現実の中に現実を織り込んだ作品」として注目を集めている。

◇本郷 矢吹(ほんごう・やぶき)1967年(昭42)生まれ、東京都出身の55歳。とある県警警察本部の外事課に籍を置き、韓国語のスキルを生かして朝鮮半島を中心とした周辺国の情報を担当。国際情勢に精通。警察庁では危機管理も担当した。

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