×

大事なのは保持率の高い低いだけではない…日本代表の常勝指数は“敵陣”比率20%

[ 2023年4月19日 05:00 ]

ウルグアイ戦で激しく競り合う三笘
Photo By スポニチ

 日本サッカーの現在と未来を考えるため、従来の保持率からもう一歩踏み込んだデータはないだろうか――。本紙にコラムを寄稿するスポーツライターの金子達仁氏(57)からそんな宿題を与えられた記録担当記者が、少し角度を変えたデータを探してみた。 

 Jリーグ公認データ「J STATS」を活用した本紙(東京版)連載「水曜Jトピ」の12日付で、今季J1のボール保持率と順位の関係を取り上げた。見出しは「支配率の低いチームが上位に 昨年W杯の日本ばり!?逆転現象」。上位につける神戸や名古屋の保持率が低く、逆に保持率の高い川崎Fや横浜FCが低迷しているという傾向を指摘した。

 直近の15日に一斉開催された第8節でも、その傾向は顕著に表れた。保持率トップの川崎Fと同ワーストの名古屋の対戦は、2―1で名古屋が勝利した。この試合の保持率は川崎Fが66・3%、名古屋が33・7%。想像以上の差がついていた。

 金子氏は翌日の木曜日コラム「春夏シュート」13日付で、「気になる日本の敵陣での保持率」として「日本の場合は、もう一歩進んでデータが必要なのでは、という気がしてきている。つまり敵陣での保持率。あるいはペナルティーエリア(PA)への進入回数と進入時間。矢吹記者、一度このデータ、とってみてくれません?」と問いかけてきた。

 まだごあいさつもできていない高名なライターから不意に声が掛かり、恐縮しながらも回答を考えた。「J STATS」の元データには、ピッチを3分割した保持時間が記載されている。ボールを保持している時間のうち、ピッチを3分割した攻撃側エリアを示すアタッキングサード(AT)の比率を計算した。母数を自チームの保持時間のみとすることで、保持率に左右されない各チームのスタイルが見えるのではと考えた。結果は現在3位の広島、10位の湘南、首位の神戸の順に高くなった。

 「J STATS」にはPA進入回数の数値もあり、同じ3チームが上位で湘南、広島、神戸の順になる。3チームの保持率は、いずれも50%を切っている。これらの数値が低い浦和や新潟が健闘しているなど絶対的なものではないが、実際の順位や得点数に反映されるデータといえる。

 金子氏はJリーグの傾向を踏まえて、昨年のW杯で目標にあと一歩届かなかった日本代表の目指す方向性に考えを巡らせている。そこで昨年のW杯から今年の親善試合までの6試合で、同じ「データスタジアム社」が集計している保持率などのデータと試合結果の関係をまとめた。

 日本は保持率が50%以上の3試合は1分け2敗、50%未満の3試合は2勝1分け。金子氏の「日本では代表でも“保持率は高いのにチャンスが少ない”という試合の比率が高めになってしまった」との指摘通りになっている。

 第2次森保ジャパンの2試合は、ともに保持率が50%を超えた。ただ、ボール保持時間内でのAT比率はウルグアイ戦が9・1%、コロンビア戦は13・3%。W杯での日本の平均よりも低くなった。特にウルグアイ戦は相手のAT比率が日本の2倍近い17・7%となっており、攻撃性の違いが顕著に表れた。

 代表戦でMF堂安は「批判じゃないけど、Jリーグっぽいサッカーになっている」と発言し、ボールを回すばかりでなく、縦パスを入れる重要性を訴えた。だがJリーグでも神戸や広島の戦い方は参考になるかもしれない。この6試合とJリーグの数字を照らし合わせて考えると、相手のタイプや力関係で保持率がどうなったとしても、その中のAT比率を15~20%以上、PA進入10回以上を安定的に叩き出すような戦い方ができれば、理想的ではないだろうか。

 ということで金子さん、いかがでしょうか。少しでもヒントになれば幸いです。

 ▽保持率の計算法 「J STATS」では試合ごとに「各チームの保持時間÷実際のプレー時間」を測定して保持率を計算。両チーム合計は100%になる。両数値を累計して割ったものがチームの平均保持率。どちらの保持状態でもないルーズボールの時間をマイナスし、合計100%に届かない測定法もある。

 《J2首位町田保持率低くAT比率は21.5%》金子氏はコラムで、J2町田の戦い方も同様ではと言及していた。実際に、第10節時点で首位の町田の平均保持率は44.1%で22チーム中18番目。最下位でまだ勝利のない徳島が、保持率トップの62.2%を記録している。それぞれのAT比率は町田が21.5%、徳島は16.9%となっている。

続きを表示

この記事のフォト

2023年4月19日のニュース