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工藤壮人「必要とされる場所で」 広島移籍へ背中押した仲間の引退

[ 2017年2月3日 08:45 ]

1月の新加入会見で記念撮影に臨む広島のFW工藤
Photo By スポニチ

 柏で育ち、海外にも挑戦したストライカーが、縁もゆかりもない土地にやってきた。1月14日、広島の新加入会見。高卒の新人選手らとともに、元日本代表FW工藤壮人(26)は壇上に上がった。米MLSのバンクーバーから完全移籍で加入。一度は正式オファーを断ったものの、再びオファーを受けて決断した。

 「向こう(海外)でやるつもりだったし、昨年の11月中旬ぐらいに最初に話を頂いた時は“来年もこっちで”と断った。でも、12月にまた会いに来てくれて“君しかいない”と言ってくれた」

 J通算189試合出場66得点の実績をひっさげて乗り込んだMLS。昨年5月11日、リーグ戦初ゴールを決めた4日後のシカゴ・ファイアー戦で相手GKと衝突した。「あごの骨が折れて、歯が唇を貫通して…。地面にぶつかって気を失った」。翌日にあごを手術、その次の日には慌ただしく退院。それから1カ月、夫人が作った1日10食にも及ぶ流動食を摂り続け、約2カ月後に公式戦に復帰した。

 大ケガを乗り越えながら、MLSでの1年間は17試合出場2得点に終わった。周りから「失敗」と捉えられても「選手として、ひとりの人として成長できた」と海外挑戦を振り返る。そんな中、同学年で、柏の育成組織から一緒に育ってきたMF比嘉厚平が昨年末に26歳の若さで引退した。いつ、終わるか分からない現役生活―。「必要としてくれる場所でやりたい」という思いが強くなった。バンクーバー以上に求めてくれた広島への移籍を決めた。

 退団した元日本代表FW佐藤寿人の穴を埋める存在として期待される点取り屋。慣れ親しんだ黄色ではなく、紫のユニホームに袖を通す。「実際に今回はレイソルからオファーはなかった。レイソルの(エースナンバーである)9番をつけてから違うステージに行ったけど、その次の年には違う選手がつけていた。それは正直、寂しかった」。古巣への思いは振り切った。背番号50を背負い、工藤の新たな挑戦が始まる。(西海 康平)

 ◆工藤壮人(くどう・まさと) 1990年(平2)5月6日生まれ、東京都出身の26歳。柏U―12、同U―15、同U―18を経て09年にトップ昇格。11年にJ1優勝、12年度に天皇杯優勝、13年にナビスコ杯優勝に貢献。16年にバンクーバーへ移籍し、今季から広島。国際Aマッチ4試合出場2得点。1メートル77、74キロ。利き足は右。

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2017年2月3日のニュース