【サウジカップ】パンサラッサ 歴史的V 「世界の矢作」また偉業 最高賞金約13.5億円獲得

[ 2023年2月27日 05:30 ]

〈サウジ8R・サウジC〉パンサラッサでレースを制し、口取り写真に納まる吉田豊(上)、矢作師(右から3人目)ら(AP)
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 「世界のYAHAGI」がアラビアンドリームをかなえた。サウジアラビア国際競走のG1「第4回サウジカップ」は25日、首都リヤドのキングアブドゥルアジーズ競馬場で13頭で争われ、最内1番ゲートから先手を奪ったパンサラッサ(牡6=矢作)が直線、粘りに粘って3/4馬身差で逃げ切りV。日本馬として歴史的初勝利を収め、世界一の超高額決戦で1着賞金1000万ドル(約13億5000万円)をものにした。この日、日本馬は計3勝。また、今月いっぱいで引退、調教師に転身する福永祐一(46)はラストライド2鞍で12着、3着だった。

 「世界のYAHAGI」がまた偉業を成し遂げた。逃げ切り狙いで直線に向いたパンサラッサが持ち味のしぶとさをフルに発揮する。迫られはしても二枚腰で抜かせない。米国馬カントリーグラマーを3/4馬身差で振り切って、歴史的勝利のゴールに飛び込んだ。

 馬上でインタビューを受けた殊勲の吉田豊は「やりました!」と何度もガッツポーズ。夏に定年を迎えるベテラン池田厩務員はゴールの瞬間、崩れ落ちるように号泣した。そして感無量の面持ちでスタッフの肩を抱く矢作師。歓喜の輪が広がる。矢作師がみんなの思いを代弁した。

 「吉田豊ジョッキーのスタートが素晴らしく、今日は完璧なスタートを切りました。1番枠を引いたとき、アドバンテージになると思ったし、実際そうなりました。こんな結果が出るとは信じられません。スタッフと馬に感謝したい」

 発馬で後手に回れば、もまれるリスクのある最内枠でドンピシャのスタートを決めた。出脚がついて前へ。ダートの経験は1回(20年師走S11着)しかなかったが、むしろ芝より行きっぷりがいいのでは…と思えるほどフィットしたフットワーク。終始、絶好の手応えでラップを刻んだ。

 昨年ドバイターフで同着Vを飾った芝の実績馬。12月にサウジカップ参戦の意向を発表した際に「やってみないと分からないけど自分の感性では馬場は合うと思う。サウジは本質的に先行有利なので面白い挑戦になる」と適性を口にしていた。思い描いた通りの会心V。矢作マジックと称される用兵がズバリはまった。

 挑戦し続けることが矢作厩舎のスタイルだ。一昨年、ラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌで参戦した米競馬の祭典ブリーダーズカップで日本馬初勝利。一方、その年はJRAリーディング2位に終わり、首位を明け渡した。さらに看板馬コントレイルが引退。「厳しい年になると思った」と覚悟しつつ、昨年も積極的に海外に打って出た。サウジ、ドバイ、英国、仏国、香港へ。それでいて国内でも勝ち星を積み重ね、JRAリーディングを奪回。今回のサウジカップ挑戦にも野望があった。「日本馬の最高着順は(ゴールドドリーム、マルシュロレーヌの)6着なので勝つことは日本競馬にとってセンセーショナルなこと。ぜひとも達成したい」。有言実行のタイトル奪取となった。

 次のターゲットは既に招待を受諾済みのドバイターフ(3月25日、メイダン)か、この勝利を受けて同日のドバイワールドカップでダート続戦か。「オーナーと相談して決めたい」と矢作師。いずれにしても、日本が誇る二刀流ホースが世界のホースマンに注目されるのは間違いない。

 ◇矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961年(昭36)3月20日生まれ、東京都出身の61歳。日本有数の進学校、開成高校を卒業後、オーストラリアに渡り武者修行。帰国後の84年、栗東トレセンに入り、厩務員、調教助手を経て04年、14度目の挑戦で調教師試験に合格。05年3月に開業して5日の阪神1R・マルタカクインで初出走(9着)、26日中京9R・テンザンチーフで初勝利。JRA通算8152戦798勝、うち重賞57勝、GIは12年日本ダービー(ディープブリランテ)、19年有馬記念(リスグラシュー)、20年コントレイルの3冠制覇など14勝。

 ◆一口あたり サウジCの賞金1000万ドルは、日本の競馬と配分が違って馬主70%、調教師、騎手、厩舎にそれぞれ10%。オーナーの広尾レースはクラブ法人で、パンサラッサは1口あたり2万5000円で2000口の募集だった。今回、1口あたりの賞金割り当ては、諸経費など別にした単純計算で約47万2500円。

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