伊藤雄二元調教師 遺言で孫の「お経デビュー」手配し家族葬で見送られる

[ 2022年8月20日 05:10 ]

伊藤雄二元調教師死去

エアグルーヴに口づけする伊藤雄二元調教師
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 【悼む】葬儀を終えた娘婿の笹田和秀師は「牝馬の伊藤雄二先生やね」と称し「ダービー馬のウイニングチケット以外はエアグルーヴを含めて全て牝馬」と84年グレード制導入後のG1勝利を振り返った。喪主を務めた長男の裕氏はJRAに勤務。次男の強助手は「コロナで見舞いにも行けなかったけど、やっと病院で会えた」と悲しみに暮れながら「家族葬はオヤジの遺言でした」と教えてくれた。その遺言に触れると、お経を唱えたのは次女の嫁ぎ先の職業が住職だから、いわば親族。伊藤雄二さんは生前、その娘婿と孫にもお経を唱えてほしい旨を伝えている。競馬社会でデビュー戦は大事。孫の住職は祖父の希望通り葬儀で唱えるお経の“デビュー戦”を無事に務め上げたのだ。

 競馬界に残した足跡は偉大。それでもこのご時世、こうした家族葬は多く、17日に死去した伊藤雄二氏は19日、ファミリーに見守られながら荼毘(だび)に付された。

 期せずして明日は札幌記念が行われる日だ。97&98年エアグルーヴ、04年ファインモーションと管理馬で制し、涼しい顔で見届けた名伯楽の姿が思い出される。種牡馬トニービンを成功させたのは言うに及ばずで、札幌記念を秋のステップレースに起用したのも先駆者たるゆえん。

 記者である私は何度も食事の席に招いてもらった。函館にあるご自宅にも、お邪魔したことがある。「あいさつは自分が年上であっても相手より先にするんやで。なんでかって?タダや。お金はかからん。あいさつされて嫌がるのはおらんやろ」と持論を述べるには、おちゃめすぎる顔だった。どうか、安らかにお眠りください。(菱田 誠)

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2022年8月20日のニュース