元騎手の西原玲奈氏 菜七子に気付かされた現役時代の甘さ…いつかG1で“対決”を

[ 2018年8月26日 05:30 ]

現在は調教助手として活躍する西原さん
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 「男社会」が根付く競馬界。加えて、競馬は男女同等の条件の下で競われる数少ないスポーツの一つ。その中でこれまでJRAでは菜七子を含めて7人の女性ジョッキーが誕生したが、奮闘の陰には多くの苦労もあった。JRA通算17勝を挙げた西原(現姓・前原)玲奈(36、現調教助手)が11年間の現役生活を振り返ると同時に、菜七子に自身が果たせなかった夢を託した。

 菜七子が記録を更新した。男性社会の中にあって、JRAでは現時点で紅一点の女性ジョッキー。彼女が見習いとして独身寮に入った時、女性用のお手洗いすらなかったというから苦労のほどがうかがえる。

 そんな彼女と同じ女性騎手としての経歴を持つのが栗東・梅田智之厩舎に所属する西原(現姓前原)玲奈調教助手だ。当然、誰よりも女性騎手の大変さを知る人物の一人。西原助手は菜七子を祝福しつつ、次のように語った。

 「私は現役時代、正直“女性としてのディスアドバンテージがあるかな…”と感じてしまうことがありました」

 デビューから2年で15勝を挙げて、順風満帆だった西原。しかし減量特典がなくなり、乗り鞍が激減。わらをもつかむつもりで、自厩舎以外の厩舎の調教も手伝った。しかし、そのことで師匠と仲違い。けんか別れのような形で飛び出し、フリーとなった。しかし、騎乗依頼が増えることはなかった。現役騎手でありながら競馬場に行けず、週末もトレセンで調教にまたがる日々。周囲から「頑張れ」と声を掛けられても、どう頑張ればよいか分からない。元をたどれば「女性としてのハンデなのではないか?」と感じることが少なからずあった。

 しかし、現在の菜七子の活躍を目の当たりにするにつれ、考えが変わったと続ける。「菜七子ちゃんを見ていると、自分の現役時代は“甘えがあったのかな?”、“あれが私の実力だったのかな?”と思うようになった。自分の頑張りが足りなかった部分に気付きました。それと、この世界で活躍するには、人を蹴落としてでも、と思えるぐらいの強さも必要なのだと思います」。

 活路を見いだすべく、障害レースにも騎乗した。しかし落馬し、腰椎骨折などの大ケガを負った。それでも、病院に駆けつけた母に現役続行の強い意志を伝え、約1年後に復帰。10年に引退するまで、現役生活は11年に及んだ。

 引退後は調教助手に転身、結婚もした。レッツゴードンキやショウナンマイティといった重賞ウイナーに関わった。「今の私の立場は違うけど、菜七子ちゃんに負けないように頑張って、いつかG1の舞台で対決できたらいいなって思っています」。そう話すと、後輩にエールを送った。

 「これからもケガには注意してもっともっと勝ち鞍を増やし、大きな舞台でも活躍できることを祈っています。今回は本当におめでとうございました!!」

 2人のホースウーマン。世代も拠点も立場も違うが、共に男社会に風穴をあけ、時には手を組むこともあってほしい。日本の競馬界の発展のために、そんな日が来ることを願っている。

 ◆西原 玲奈(にしはら・れな=現姓前原)1981年(昭56)11月20日生まれ、佐賀県出身の36歳。競馬学校騎手課程16期生で、00年にJRA6人目の女性騎手としてデビュー。同年3月4日中京2Rで初騎乗(リブレット11着)。同25日中京7RキンザンウイニングでJRA初勝利。10年2月に現役引退後、現在は梅田厩舎で調教助手を務める。JRA通算590戦17勝。

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