【ラジオNIKKEI賞】“不屈の”嶋田 ライトで重賞初制覇だ

[ 2018年6月29日 05:30 ]

ラジオNIKKEI賞木曜追い切り ロードライトでラジオNIKKEI賞に騎乗する嶋田(撮影・近藤 大暉)
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 手塚厩舎はフィエールマンだけじゃない!日曜福島メインの「第67回ラジオNIKKEI賞」で静かに闘志を燃やすのが、同厩舎のロードライトに騎乗する8年目の“苦労人”嶋田純次(25)だ。新人最多勝利を挙げた11年のデビューから、12年の落馬による大ケガなど紆余(うよ)曲折を経て、悲願の重賞初勝利に挑む。

 美浦トレセンの朝、嶋田は絶え間なく調教に乗り続ける。馬から下りたと思えば、すぐにスクーターにまたがって次の厩舎へ。せわしない毎日のルーティン。それでもロードライトの話になれば、足を止めてあふれる思いを口にした。「手塚先生とオーナーに恩返しができるチャンスが来た。重賞を勝てば自身にとっても名前を売るチャンス。気合が入ります」

 デビューは鮮烈だった。初騎乗初Vを皮切りに、11年の新人最多勝利(18勝)を記録。最高のスタートを決めたように見えた。だが、落とし穴が待っていた。12年の中京競馬で落馬し、肝臓と腎臓を損傷。集中治療室(ICU)に入り、生死の境をさまよった。「感染症を起こしてしまったんです。これはもうヤバイってことですぐに両親が呼ばれた」。その後も落馬により13年に右膝の前十字、後十字、副側靱帯(じんたい)を断裂、14年には第4腰椎横突起骨折を負った。今、無事に乗れていることが奇跡のような故障の数々。それだけに嶋田は「ケガをせずに乗れているということ自体に幸せを感じている。こういう感覚になるとは全く思ってなかったですね」と心情を伝える。

 相棒への思いは誰にも負けない。減量特典もなくなって騎乗数が減る中で、昨年の1勝はロードライトと挙げた。「11月まで勝てなくてどうしようと思っている時に勝てた。あの勝利には本当に救われました」。新馬戦から手綱を取り続け、特徴は熟知している。「1800メートルは前回で大丈夫だった。何より51キロだし、開幕週の馬場も合うと思う。調子が悪いなと感じる時はゲートを出ないけど、今回は出ると思います」

 デビュー時、「持ってる男」と称された嶋田。本人が「手塚厩舎に所属することができたんだから持ってます」と胸を張った当時から7年の時がたった。「本当に恩返しができれば。フィエールマンもいい馬だし、一緒に頑張りたい」。高すぎる荒波を幾度も乗り越えてきた。そろそろ歓喜の瞬間を迎えても誰も驚かない。そこには祝福の嵐が待っている。

 ◆嶋田 純次(しまだ・じゅんじ)1993年(平5)3月8日生まれ、埼玉県出身の25歳。競馬学校卒業式では、その年で最も優秀だった生徒に贈られる「アイルランド大使特別賞」を受賞。11年3月5日の中山1R、所属する手塚厩舎のワイズアンドクールで初騎乗初勝利。JRA通算は1939戦72勝。重賞は8戦で未勝利。1メートル62、49キロ。血液型O。

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