後藤理事長「強い馬づくりサポート」「国境越えて行き来する環境を」

[ 2015年1月27日 05:30 ]

昨年のドバイデューティフリーを制したジャスタウェイと福永。世界がより近くなる

理事長インタビュー

 ――ファンにアピールしたい今年の見どころは。

 “ダービーからダービーへ”。ダービーが終われば翌週から新馬戦が始まり、そして次のダービーを目指すという競馬番組の考え方に沿って昨年、2歳重賞戦線を整備しました。G1朝日杯FSを阪神のマイルに移設し、阪神のラジオNIKKEI杯2歳SをホープフルSと改称した上で、G2として皐月賞と同じコースに編成しました。それぞれの路線を歩んだ馬たちがどんな結果を出すのかご注目ください。また昨年は古馬のダートG1路線を改善し、本年は古馬牝馬路線もターコイズSの重賞昇格などで整備しました。

 ――番組が整備される一方で、西高東低が続いています。特にダートのG1戦線では関西馬が質量とも圧倒。東西格差をどう見ていますか?

 (東西の交流がほとんどなかった)アローエクスプレスやタニノムーティエの時代とは違い、交通手段が発達して人馬とも東西間を移動できるし、西だ、東だ、という時代ではなくなってきたとも思います。とはいえ、東西が拮抗(きっこう)していた方が見る側の面白さはある。関東の調教師にもトップグループで頑張っている人がいるし、美浦トレセンではここ数年、関西馬に負けない馬をつくるんだという気概を感じる。東西を問わず、強い馬づくりを目指す取り組みをサポートしていきたいと思っています。

 ――厩舎によってはトレセン近郊の育成場で仕上げて入厩後、時を置かずに出走させる方法が取られています。入厩後10日を経なければ出走できない内厩制度を見直す考えは?

 内厩制度は維持すべきです。防疫管理、公正確保、情報提供の3点は内厩だからこそ保証されるものと考えています。競馬は馬券の売り上げで支えられているのですから、出走馬の情報をオープンにするのが前提になります。競馬の公正を徹底的に守る仕組みを機能させていくためにも、内厩制度は必要です。馬券を売る以上、公正確保が真っ先に問われます。

 ――ところで、海外レースの馬券発売ですが、近々競馬法改正案が国会に提出されるような報道もありました。ファンも我々も大きな期待を寄せていますが、どんな構想をお持ちですか。

 検討していただいていることは知っておりますが、具体的にどのようになるか分からない段階ではお答えのしようがありません。ただ、お客さまから多くのご要望を頂いていることは承知しています。実現には多くの課題がありますが、我々も前向きに取り組むと言ってきました。凱旋門賞には毎年のように日本のトップホースが出走し、皆さまワクワクしながら熱戦に注目しているのですから。競馬がグローバルなスポーツであることを、より多くの皆さまに知っていただけたらいいなと思っています。

 ――最後に理事長の夢を。

 サラブレッドの魅力や競馬のだいご味をより多くの方々にお届けしたい。何といっても、サラブレッドは世界共有の資産です。世界中のサラブレッドは血統をさかのぼれば3頭に行きつくのですから。同じ始祖を持つそれぞれの国の馬たちが国境を越えて自由に行き来し、世界中の人々が競馬を楽しむ、そういう環境をつくりたい。国によっては馬券に対する捉え方が違うし、輸送、防疫、関税などさまざまな課題もクリアしなければいけませんが、世界の競馬関係者と手を携えながら取り組んでいきたい。大きな夢かもしれませんが、実現させていきたいと思っています。

 ◆後藤 正幸(ごとう・まさゆき)1951年(昭26)10月3日生まれの63歳。東京都出身。75年早大卒、JRA入会。ニューヨーク駐在員事務所長、総合企画部長などを経て、06年理事、11年常務理事、14年に理事長就任。

続きを表示

2015年1月27日のニュース