後藤JRA理事長に聞く ステータスもっと高めたい、90年が転機に

[ 2015年1月27日 05:30 ]

競馬界のさらなる発展へ、熱い思いを語るJRAの後藤理事長

 2015年の中央競馬は中山、京都の新春開催を売り上げ増でスタートした。加速する国際化や東西格差、外厩制度など日本の競馬を左右するテーマを抱えるJRAはどんな展望を持っているのだろうか。昨年9月に就任した後藤正幸JRA理事長(63)に聞いた。

 ――JRAは昨年、創立60周年を迎えました。新理事長として61年目となる今年のテーマは?

 後藤理事長 “あなたの競馬が走り出す。”今年、JRAが掲げたキャッチコピーです。お客さまに参加いただいているからこそ競馬が成り立っている。主催者としての原点です。JRAの経営の基本方針として「お客様とともに」を最初に掲げていますが、私自身の強い思いでもあります。多くの方に競馬の魅力に触れていただき、参加して親しんでもらいたい。そうすることで競馬のステータスをもっと高めたい。若い頃からその一念でやってきました。

 ――理事長自身の原点でもあると?

 個人的なことを言わせていただければ、父親が競馬会の獣医をしていたため、幼少時から競馬に近いところで生活してきました。小、中学校時代に身上書を渡されたとき、私は父の職業欄に「JRA職員」とは書けなかった。「競馬なんか…」。昭和30年代当時の競馬に対する世間のイメージは賭博です。300年という歴史の中で淘汰(とうた)を繰り返してつくられたサラブレッドという芸術品が、たくさんの関係者に支えられながら頂点を目指す。そんな競馬のだいご味を理解してもらえなかった。ギャンブル以外にもたくさんある競馬の魅力を世間の皆さまに評価してほしい。そのためには多くの人に触れてもらうしかないですよね。競馬を認めてもらって社会的なステータスを高めることがJRA入会以来のテーマでした。

 ――現在は競馬が社会に認知され、有馬記念やダービーは国民的レジャーになっています。

 確かに当時に比べて多くの方に参加いただいています。ハイセイコーブームに続きトウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスが競馬を露出してくれ、ミスターシービーの痛快なドラマの後にオグリキャップ、武豊が競馬の魅力を世間にアピールしてくれました。世間の見方が劇的に変わったと体感できたのは「ナカノ・コール」です。

 ――アイネスフウジンがベテラン中野騎手(現調教師)の手綱で優勝した1990年の日本ダービーですね。

 ああいう歓声が競馬場を包んだのは初めてです。馬券で負けた人の罵声が聞こえず、全ての人が優勝した人馬を称賛しました。私も東京競馬場で鳥肌が立ちました。勝者を称えるウイニングランはこの時から習慣になったと思います。競馬が賭博にすぎないのなら、ありえない光景です。ただし最近の意識調査でも、6割強の人が競馬に関心がなかったり、否定的だったりします。そういう方にも一度競馬場にご来場いただき、サラブレッドと騎手が懸命にゴールを目指す姿を見てもらいたいと思います。

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