【凱旋門賞】松本調教厩務員 馬と人との深い信頼関係に感心

[ 2013年10月2日 06:00 ]

02年の凱旋門賞で13着だったマンハッタンカフェ(中央)

 2002年に凱旋門賞に挑戦、13着だったマンハッタンカフェの松本重春調教厩務員(62)は、それ以前にも調教助手としてサクラチヨノオー(88年ダービー)やサクラバクシンオー(93、94年スプリンターズS)といった名馬を担当した腕利き。だが、海外渡航は後にも先にも凱旋門賞の時だけだ。フランス語など話せない。「15歳で北海道から東京に出てきた時のような気持ちだった。馬と一緒だから行けたようなもの」と振り返る。

 初めて触れる欧州の競馬。印象深かったのは馬と人との信頼関係だった。馬が公道を通る際は、一般の車でも遠く離れた所で止まって待つ。「技術的には日本の方が進んでいると感じることもあったが、フランス人は馬のことをよく分かっている」と感心した。

 公開調教では、デビューしたてのルメールの誘導で本番と同じコースを乗った。万全の態勢でレースに臨んだが13着。左前屈腱炎が判明して引退した。「調教の感じから、ああいう芝はこなしたと思うし“たられば”だけど、故障がなければいい勝負ができたはず。でも、凱旋門賞に出走したんだから大したものだと思うよ」。まだ挑戦が珍しかった時代。ロンシャンに蹄跡を刻んだ愛馬をいたわった。

 腰を痛めて一時は現場を離れたが、現在は佐藤吉厩舎の厩務員として復帰している。「女房は当時、応援ツアーで来ていて“また行きたいね”と言っている。退職したら行こうかな」と話し、少し考えてからこう言い直した。「やっぱりフランスには馬と一緒に行くのがいいな」。競馬人にとってフランスは観光で訪れる場所ではないのだ。

 ◆松本 重春(まつもと・しげはる)1951年(昭26)2月19日、北海道生まれの62歳。高木良三厩舎で調教助手となり、境勝太郎、小島太厩舎へ。現在は佐藤吉厩舎の厩務員。担当馬はハプスブルク(3歳500万)、オーバートゥループ(2歳新馬)。

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2013年10月2日のニュース