【岸本加世子 我が道19】涙が出ました…サブちゃんから母への色紙

[ 2025年11月20日 07:00 ]

母が大ファンだった北島三郎さんは私にとっても“芸能界の父”のような存在です
Photo By 提供写真

 京都・太秦の東映撮影所の中を町娘の格好のまま歩いていると、「カヨコ~、ちょっと来い」と呼びかける方がいる。北島三郎さんでした。

 北島さんはお付きの方に「俺の財布を持ってこい」と告げ、
 「おまえがこの世界に入ったって聞いたから、どこかで会ったら渡してやろうと思ってたんだよ」

 そう言いながら財布の中から一枚の写真を取り出しました。私と一緒に写った2ショットです。

 5歳か6歳の時、サブちゃんの後援会の運動会で撮られた一枚。サブちゃんに抱っこされています。こんな写真があることも、その写真を持っていてくださり撮影所で声をかけてくださったことも、思いも寄らぬ出来事でした。想像するに、私が芸能界に入ったことを、厚かましくも母が手紙でも書いて伝えたのかなぁ。そんなふうに思っています。

 TBSドラマ「美空ひばり物語」の撮影中の1989年11月に倒れた母。2カ月に及ぶ闘病生活のかいなく、意識を取り戻すことのないまま息を引き取りました。通夜、葬儀は東京・調布の家で静かに営みましたが、北島さんと奥さまが真っ先に駆けつけてくださいました。

 熱烈なサブちゃんファンだった母は

 「わたしが死んだらね、『兄弟仁義』を朝までかけてね」
 と“遺言”を残していましたので、「兄弟仁義」がかかる中、サブちゃんは色紙に直筆で歌詞をしたためてくださったのです。

 「淋(さび)しい時は一人旅 天まで届け兄弟仁義」

 そしてその色紙を母が眠る布団の上にそっと置いてくださいました。

 涙が出ました。色紙はもちろん棺の中に納めましたが、私は「おかあちゃん、喜んで生き返るんじゃないか。飛び起きるんじゃないかな」と、冗談でなく真剣にそう思いました。

 「まつり」「北の漁場」「風雪ながれ旅」「与作」「函館の女」「歩」などなど、数多くのヒット曲を世に送り出してきた日本を代表するあまりに偉大な歌手。そんな方が、単にファンの娘というだけなのに、ここまでしてくださる。そして「とにかく見守っているからガンバレ!」と言ってくださる。

 本当にありがたくて、母娘ともどもこの感謝は忘れません。

 10月4日に89歳の誕生日を迎えたサブちゃん。さすがに公演の数は減りましたが、コンサートには足を運んでいます。楽屋にお邪魔して近況を報告したり、お電話で話をしたりと、ずっーと可愛がっていただいています。心の支えで、芸能界の父親のような存在です。

 ◇岸本 加世子(きしもと・かよこ)1960年(昭35)12月29日生まれ、静岡県島田市出身の64歳。77年、テレビドラマ「ムー」で女優デビュー。以降、テレビ、舞台、映画、CMなどで幅広く活躍。ドラマ「あ・うん」、舞台「雪まろげ」、北野武監督の映画「HANA―BI」「菊次郎の夏」など代表作多数。著書に小説「出てった女」、エッセー「一途」など。

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