月亭天使 入門15年の噺家が大トリを務める「翔ぶトリウィーク」で歯が抜けて…

[ 2025年10月17日 11:00 ]

入門から15年を迎えた月亭天使
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 【古野公喜のおもろい噺家み~つけた!】上方落語界の女流噺家で、ユニークな視点からの創作落語で知られる月亭天使の株が上昇中だ。9月22~28日まで天満天神繁昌亭(大阪市北区)で入門15年目の噺家が大トリを務める「翔ぶトリウィーク」に同期4人の先陣を切って出演。「デキは65点。これからの自分の課題が見つかりました」といい経験を積んだようだ。

 江戸(東京)の落語界には真打ち制度があり、真打ちに昇進すれば寄席でトリを務めることができる。だが、上方落語会には制度もなく完全な実力主義。なかなか“トリ”を務める機会に恵まれなかった。昨年から、入門15年を迎えた噺家を一人前に育成するために、経験を積ませようと「翔ぶトリウィーク」がスタートした。

 3、4月に15周年記念で15日間連続の落語会を開催。その自信からか開幕前には1週間公演を「緊張しない」と平気な顔をしていた。だが、いつもの自分を応援してくれているファンばかりでない寄席でのトリ。自分の前では大御所の先輩が一席。「どうしても先輩とは技術の差がある。どうしたらお客様に納得して帰っていただけるか」とずっと考え、悩み続けた。

 初日の高座後、なんと右上の差し歯(犬歯)が抜けた。「ウチでパンをかじっただけで」。過剰なストレスの影響か。ただ「お客さんは温かかった。緊張感があって、いつものネタのセリフを間違えてしまいましたが」。2日目にはノドを痛めるなど、いいコンディションではなかったが、古典「夢の皮財布」「鬼の面」「七段目」「愛宕山」や新作「ロバのパンケーキ」などを披露した。新作は酔っ払った女の子が主人公のネタ。何とか1週間を完走し、自己採点では「65点でしょうか」と笑った。

 噺家になるまでの経歴もまた、超ユニークだ。龍谷大では文学部哲学科に在籍。生命倫理学を専攻し、「尊厳死のことなど勉強してました」という。卒業後は出版社に勤務したが公的文書の作成などで「話が違う」と3年で退社。派遣で働きながら「大阪シナリオ学校」で漫才、落語の台本を勉強した。

 子どもの頃からテレビっ子でお笑い好き。「ダウンタウン世代でした」。落語は高校時代に文化鑑賞会で初めて聞いた。「桂文福師匠、桂塩鯛師匠が高座に上がってました」。シナリオ学校を卒業後、映画にも興味があって、演劇学校で芝居をやり、脚本にも手を出した。演芸台本の勉強もしながら、プロの漫才コンビにネタを書くことも。お笑いコンビ「青空」「天津」や若手漫才師にネタを提供したこともあった。02年の「第1回R―1ぐらんぷり」の1回戦(初日)で審査員を務めたこともある。

 08年頃から「お芝居の脚本を書きたい」と演劇学校に通いつつ、知人の紹介で天満天神繁昌亭でアルバイトを始めた。「三味線とかお囃子とか落語に絡む仕事をできないか」と考えていたところに、露の都の「初天神」を聞いて「都師匠がメチャメチャおもしろかったんです。情景が想像できた」と落語への興味が強くなった。

 幼少期から文章を書くことが好きで、裏方として台本を書いたり、企画するタイプだった。落語家になったのは「なんででしょうかね。出方になるつもりは全くなかった」と天使自身も苦笑い。「自分が書いたモノを皆さんが笑ってくれるのが快感になった。女性の気持ちを書きたい。ならば、自分がやった方が早いよねって」。繁昌亭でチケットを売りながら、落語家への転身を決め、「やるなら一番弟子の方がいい」とそれまで弟子を持たなかった月亭八天(現七代目月亭文都)に入門。人間国宝・桂米朝さんの初の玄孫弟子となった。

 師匠たちから「天使ちゃんがいたら場が和む。空気感がある」と、かわいがられている。自身の体験や、知人の実体験、話を基にして作った新作は60本余り。古典の改作も含めて、これまで培ってきた台本を書く技術を発揮したい。「新しい落語の見せ方ができれば」と1つのお芝居の中にいくつか落語があるような公演を開催することが理想だ。

 12月19日には繁昌亭の夜席で「月亭天使 立川吉笑ふたり会」を開催する。

 ◇月亭 天使(つきてい・てんし)本名=福田和栄。8月26日生まれ。大阪府豊中市出身。龍谷大卒業後、出版社に勤務。その後、大阪シナリオ学校などを経て、10年2月に月亭八天(現・七代目文都)に入門。趣味は読書、お笑い鑑賞。

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