「あんぱん」台本になかった結太郎帽子の演出 釜じい“遺言”週サブタイトル回収「説得力」CPも涙の裏側

[ 2025年7月17日 08:15 ]

連続テレビ小説「あんぱん」第79話。朝田釜次(吉田鋼太郎)は愛息・朝田結太郎のソフト帽をかぶり、3姉妹に「面白がって生きえ」――(C)NHK
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 女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は17日、第79回が放送され、11年ぶりの朝ドラ出演となった俳優の吉田鋼太郎(66)が圧倒的な存在感を示してきた主人公の祖父・朝田釜次(吉田鋼太郎)の“最期”が描かれた。制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサー(CP)に作劇や撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなどのヒット作を放ち続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。

 吉田の朝ドラ出演は、中園氏が脚本を担当した2014年度前期「花子とアン」以来。ヒロイン・安東はな(吉高由里子)の親友・葉山蓮子(仲間由紀恵)が嫁ぐ九州の石炭王・嘉納伝助役を好演し、映像作品進出、ブレークへの足掛かりとなった。

 今回演じた釜次は、職人気質の頑固者だが、家族への愛情は人一倍。戦後、柳井嵩(北村匠海)と再会。柳井千尋(中沢元紀)を悼み「お国のためじゃろうと、なくしてえい命らあ一つもない」(第62回・6月24日)。これが、のぶを勇気づける嵩の言葉につながった(第63回・6月25日)。

 そして、第79回。肺の病が進み、釜次は朝田石材店を自分の代で畳むと宣言した。

 「わしは石屋が性に合うちょった。やき、ずっーと面白がって働いてきたがじゃ。もう十分じゃ。えいか、この家に縛られたらいかんぞ。おまんらも、面白がって生きえ。結太郎の言いよった通りじゃ。女子(おなご)も、いや、女子こそ大志を抱きや」「結太郎、おまん、知っちゅうがか。のぶの大志がどこにあるがか。戦争中のぶは、お国のために尽くし、家族のためによう働いてくれた。これからは遠慮のう、大志を貫いてほしいがじゃ」

 釜次は愛息・朝田結太郎(加瀬亮)の形見のソフト帽をかぶる。

 「のぶ、おまんを待ちゆう人がおったら、そこに向こうて走れ。おまんが助けたい人がおるがやったら、どればあ遠くても、走っていけ。こんまい時から、のぶはそういう子じゃ。なりふり構わず走れ。間違うても、転んでもえい。それも全部、面白がって生きえ」

 のぶは「うち、釜じいの孫でよかった。最高や」、朝田蘭子(河合優実)は「うちも面白がって生きるき」、朝田メイコ(原菜乃華)は「うちが面白がって生きちゅう時は、歌いゆう時や」。3姉妹は涙の誓い。釜次「おまんらの『よさこい節』が聴きとうなった」。歌声と手拍子の中、釜次は愛妻・朝田くら(浅田美代子)に「ありがとにゃ」――。

 光が降り注ぐ中、結太郎の帽子をかぶり、袢纏(はんてん)を羽織った釜次が「よさこい節」を踊る。「よさこい、よさこい」。ノミが石を彫る音――。

 釜次が“遺言”を授ける居間のシーン。台本のト書きは「置かれた結太郎の帽子を見つめている」だったが、釜次は結太郎のソフト帽を愛おしそうに手に持ち、かぶった。

 第13回(4月16日)、のぶは教師を目指して師範学校に進みたいと直訴。釜次は「いかんいかんいかん!嫁に行きそびれるに決まっちゅう!」と反対したものの、蘭子が「お姉ちゃんの夢はうちの夢や」と説得し、帽子をかぶって「お父ちゃんの代わりに、うちもお願いします」と懇願。最後はメイコが釜次にかぶせた。

 倉崎氏は「釜次が自らの意思で結太郎のソフト帽をかぶるのは、これが最初で最後です。帽子をかぶることによって、結太郎の想いも合わさって釜次の言葉が説得力を増して伝わってくる。結太郎の『女子も大志を抱け』が腑に落ち、釜次の考え方も変わったんだ、と。ラストの『よさこい節』で帽子をかぶるのは台本通りですが、居間のシーンからかぶるのは、鋼太郎さんと(第16週の演出担当)野口(雄大)監督のディスカッションから生まれました」と明かした。

 「『結太郎の帽子をかぶり、袢纏(はんてん)を着て、よさこい節を踊っている釜次』というト書きを読んだ時には涙が出ました。直接的には今際(いまわ)の際を描かず、これぞ釜次の“最期”というものを中園さんが紡いでくださいました」

 吉田は「よさこい節」を踊ってクランクアップ。倉崎氏もスタジオで見守った。

 「台詞にもあった『もう十分生きたつもりじゃ。悔いはない』の満足感と、これが最後という一抹の寂しさ。様々な感情が入り混じった万感の表情を目の当たりにして、また泣けました」。あんぱん代をめぐる屋村草吉(阿部サダヲ)との丁々発止、愛弟子・原豪(細田佳央太)の戦死を知った際の慟哭…。11年ぶりに出演した朝ドラ作品に、数々の名演を刻み込んだ。

 釜次の“遺言”「面白がって生きえ」は今週第16週のサブタイトル(副題)に採用。「失敗すらも含めて面白がって生きる。現代を生きる私たちこそ大事にしたい普遍的なメッセージ。鋼太郎さんのおかげで、説得力あふれる台詞になったと思います」と感謝した。

 のぶに依頼され、嵩が釜次を漫画にするのも中園氏のアイデア。吉田&釜次への愛が詰まったラブレターのような“花道回”だった。

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