荒井玲良 ドラマ「Dr.アシュラ」で開眼 現場で体感した松本若菜の凄さ

[ 2025年6月18日 12:00 ]

6月18日放送の「Dr.アシュラ」第10話で水吉歩夢を演じる荒井玲良(C)フジテレビ
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 【牧 元一の孤人焦点】俳優の荒井玲良(30)が、初めて連続ドラマにレギュラー出演したフジテレビ系「Dr.アシュラ」(主演・松本若菜、水曜後10・00)で、役者として開眼した。

 その瞬間は第2話の撮影時に訪れた。演じる看護師・水吉歩夢が、大学の同級生で研修医の薬師寺保(佐野晶哉)とともに瀕死の患者に向き合う場面だ。荒井はこう振り返る。

 「カットがかかった後、涙が止まりませんでした。このままでは死んでしまう、どうにかしなくちゃいけないと思っていたら自然に感情があふれました」

 本来、救命の看護師の場面に涙は必要ない。それでも涙が出たのは、患者を救うことに必死だった歩夢の気持ちに同化したからだ。役柄と自己の一致。それは演出の松山博昭さんとの対話を経て生まれたという。

 「あの場面は引きの撮影、保側の撮影と何回か繰り返しました。歩夢側の撮影の時、松山さんから『もっと歩夢の感情にフォーカスしてほしい』と言われました。松山さんは歩夢が置かれている状況、その思いを細かく説明してくれました。それで私は段取りを一度リセットし、状況を俯瞰し、そこにいる歩夢になろうと思いました。無駄なものが抜け、その瞬間を生きる感覚がありました。あの場面は、始まってからカットがかかるまでの記憶がないんです。今まで経験したことのない感覚を引き出して頂きました。これから活動をしていく上での指針となる経験で、私の一番の宝物になりました」

 荒井は2010年、アイドルグループ「SUPER☆GiRLS」第1期メンバーとして芸能活動をスタートさせた。

 「それこそ、あの頃、ライブが始まってから終わるまでの記憶があまりなかったです。アドレナリンが出て、集中して、その時その時を生きている感じでした。お芝居をしている今とは表現の仕方が全く違いますが、集中するという点では近い部分があると思います。あの頃に鍛えられた忍耐強さ、負けない気持ち、信念が今の自分に生かされているとも感じます」

 2016年にグループを卒業し、その後、俳優業に専念するようになった。所属する芸能事務所の先輩として、今回のドラマに主演する松本若菜がいる。現在41歳の松本は18年前の特撮ドラマ「仮面ライダー電王」で俳優デビューしたものの、3年前のドラマ「やんごとなき一族」などの演技で注目されるまで、長く地道な活動を続けた。荒井はこう話す。

 「若菜さんのインタビュー記事を読むと、励まされます。ご自身が『暗黒時代』と言う過去があって現在がある。30歳になった私も、役者としてはまだまだこれからですが、焦らずに自分の個性を出していきたいと思います」

 その松本の凄さを「Dr.アシュラ」の現場で体感した。

 「若菜さんは目のお芝居が素敵です。以前から若菜さんの作品を見ていて、目から伝わるものがたくさんあると感じていましたが、今回、近くにいさせてもらって、そのことをより強く感じました。杏野先生になる瞬間、目つきが全く変わって別人になる。状況によって弱い部分を垣間見せることもある。人間味を感じさせる。その凄さを間近で感じました」

 将来、自身が何らかの作品の座長を務める時の参考になるような行動も目撃した。

 「主演で一番大変な若菜さんが周りの役者さんを気遣っていました。患者役の役者さんがずっと寝た状態で長い撮影に臨んでいると『どこか辛いところはないですか?』と声をかけていました。あとで私が『心配りをされているんですね』と言うと『自分の暗黒時代にしてもらってうれしかったことを今やっているだけ』とおっしゃっていました」

 ドラマは6月18日放送の第10話、25日放送の最終話を残すだけとなった。

 「私はもともと声にコンプレックスがあります。緊迫するシーンがたくさんある中で、私の幼く聞こえがちな声のトーンは最後まで課題のひとつでした。自分の声を録音して改めて聞いてみて、撮影では意識的にトーンを落とすようにしていました。第10話、最終話の手術のシーンで、マスクをしていて目と声の表現になりますが、そこで緊迫感、焦燥感を感じ取って頂けたらうれしいです」

 ≪後記≫ドラマの歩夢は真面目で堅い印象だが、実際の荒井は真面目さを感じさせながらも柔らかい。「歩夢はテキパキしているけれど私はテキパキしてない。役に引っ張ってもらったと思います」と荒井。会って話してみて、この作品での役作りの奏功を実感した。大器晩成の松本若菜がすぐ近くにいるのは、今後の飛躍を目指す荒井にとって心強いことだろう。松本の役者としての売りのひとつが目の芝居だとすれば、荒井の売りは何か。「それが課題。私は頭でっかちになりやすいので、本来の自分の感覚を出せるように、あまり考え過ぎないことを意識しながら、自分の強みを見つけていきたい」と荒井。大丈夫、時間はまだ十分にある。

 ◇荒井 玲良(あらい・れいら) 1994年9月25日生まれ。東京都出身。SUPER☆GiRLS卒業後、映画やドラマ、舞台で活躍。24年公開の映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」(中田秀夫監督)や今年1月期のドラマ「アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~」第5話などに出演。

 ◇Dr.アシュラ 漫画家・こしのりょうさんの作品が原作。救命医の杏野朱羅(松本若菜)が卓越した技術でさまざまな患者を助けていく物語。共演はほかに田辺誠一、小雪、荒川良々、佐野史郎、鈴木浩介、片平なぎさ、渡部篤郎ら。荒井は「それぞれのキャラクターがそれぞれの葛藤、信念を持ち、もがき苦しみながら一歩一歩前に進んでいます。弱い部分を見せることが強さにつながることもあります。作品全体を通し、それを感じて頂ければ」と話した。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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