「らんまん」語り・宮崎あおい本編登場のワケ 第三者・紀子にも「使命感の連鎖」脚本・長田育恵氏の思い

[ 2023年9月25日 08:15 ]

連続テレビ小説「らんまん」第126話。語りの宮崎あおいが本編にサプライズ登場。槙野邸を訪れた女性・藤平紀子は千鶴(松坂慶子)から万太郎の標本整理を頼まれ…(C)NHK
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 俳優の神木隆之介(30)が主演を務めるNHK連続テレビ小説「らんまん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は25日、第126回が放送され、語りを務める女優の宮崎あおい(37)がドラマ本編に事前告知なしのサプライズ出演を果たした。主人公・万太郎の没後、40万点に上る植物標本の整理を依頼され、手伝うことになる女性・藤平紀子役。宮崎の朝ドラ本編出演は2015年度後期「あさが来た」以来、約7年半ぶり。物語は初回から、万太郎の生涯を振り返る紀子の視点で語られていたことが明らかになった。脚本を務めた劇作家・長田育恵氏(46)が当初から温めていたアイデア。“秘策”に込めた思いを聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 朝ドラ通算108作目。「日本植物学の父」と称される牧野富太郎をモデルに、江戸末期から昭和の激動の時代を生き抜き、明るく草花と向き合い続けた主人公・槙野万太郎の人生を描く。

 第126回は、練馬の野原に立った万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)。植物園を思い描く…という展開。

 続くオープニングタイトルバックのクレジットは「語り・藤平紀子 宮崎あおい」。タイトルバックが明けると、万太郎亡き練馬区東大泉町の槙野邸に、1人の女性が現れた。「昭和33年(1958年)の夏、私は初めてそのお屋敷を訪ねました」。藤平紀子(宮崎あおい)、30歳。この物語の語り手。61歳になった万太郎の娘・千鶴(松坂慶子)が出迎えた。

 以前はカイコの試験場にいた紀子。今回は片付けのアルバイトと思い、区役所に応募したが、千鶴から依頼されたのは万太郎の遺品整理の手伝い。部屋を埋め尽くした40万点の標本が、東京都立大学に収められることが決まり、途方もない分類・整理が必要になった。

 紀子は「こんな重大な仕事、とても…」と槙野邸を後に…と思われたが、踵を返し、千鶴に「この標本、守ってきたってことですよね?関東大震災、それから、空襲も。20年3月、東京大空襲。私、17(歳)でした。覚えています。どんなに恐ろしかったか。あの地獄の中、炎の中を、ご家族の皆さんがこれだけの量を、守り抜いてきたってことですよね」と尋ねた。

 大正12年(1923年)9月1日、千鶴は標本を背負い、万太郎たちと根津の十徳長屋から渋谷に逃げたことを思い出した。

 紀子は「それを考えたら、私、帰れません。私も戦争を生き抜きました。次の方に渡すお手伝い、私もしなくちゃ」――。

 この“仕掛け”の狙いについて、長田氏はシナリオハンティング中に受けた驚きを明かした。

 「関東大震災の大火災、さらには第2次世界大戦の東京大空襲の間も、40万点という途方もない数の標本を、富太郎さん、ご家族、周りの方々が守り抜いたのだという事実を知って、本当に衝撃的でした。戦後、40万点の標本を初めて目にした人たちも、きっと私と同じように驚いたと思うんです。そして、大空襲から命懸けで守った人たちがいるなら、戦争で生き残った自分たちも次の世代に残さなきゃいけない。自然と使命感に駆られたんじゃないかと思ったんです」

 牧野博士が昭和32年(1957年)に亡くなった後、自宅に残された未整理状態の標本40万点が東京都に寄贈。整理・収蔵のための「牧野標本館」が昭和33年(1958年)、東京都立大学に設立された。

 「まず、牧野家から都立大学に移すまでにも大きな苦労がありました。そして、大学に収蔵されてからも20年以上の長きにわたる地道な整理作業によって、標本が活用されたからこそ、牧野富太郎は世界の牧野博士となり得たのです。この牧野コレクションを基に、各国の貴重な標本と交換したり、絶滅した植物も調査できたりと、植物分類学の基盤となってきました。この、標本を整理して、活用できる形で後世にバトンを渡そうと尽力した人たち(劇中は宮崎演じる紀子)のことは、絶対に盛り込みたいと思っていました」と執筆の動機を説明。

 そして「実際に、富太郎さんと血縁関係にない第三者で、植物学とも全く関係がなかった方が中心となって、標本整理のためには富太郎さんの行動録がなければならないと、富太郎さんの足跡を追い始めたんです。そのことが、私には物凄く貴重に感じられました。富太郎さんが生涯を掛けてきたことに対して純粋な使命感の連鎖が起きた。人の思いの結晶は美しい。それを、ドラマでも、植物学に縁もゆかりもない紀子を通して、どうしても描きたいと思いました」と振り返った。

 本編最終回(第130回、9月29日)まで残り4回。長田氏の筆に期待が高まる。

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