脳腫瘍と闘い作曲 加藤旭さん死去 16歳 昨年発表のアルバムが話題

[ 2016年5月28日 22:05 ]

 脳腫瘍と闘いながら作曲活動を続けた高校生の加藤旭(かとう・あさひ)さんが今月20日、亡くなった。16歳だった。

 26日、音楽活動団体アーツスプレッドの公式サイトで発表された。母の希さんが「懸命に病と闘ってきた息子ですが、2016年5月20日、16歳(高2)で旅立ちました。『船旅』という自作ピアノ曲を聴きながら、『じゃあ行くね』と自分で旅立ちを決めたような表情でした」と報告した。

 加藤さんは昨年5月、ピアノ曲27作品を収録したファーストアルバム「光のこうしん」を発表。大きな注目を集めた。
 
 1999年10月、滋賀県彦根市生まれ。3歳からピアノを習い始め、4歳で楽譜を書き始めた。小学3年の時に「小田原ジュニア弦楽合奏団」に入団。東京交響楽団が毎年サントリーホールで行っている「こども定期演奏会」のテーマ曲に作品を応募。2006、09年と採用された。

 中学2年の秋に脳腫瘍を発症。希さんによると、今年に入り、病状が悪化。3月半ばから「いつ呼吸が止まってもおかしくない」ギリギリの状態になったが、2枚目のCD制作がスタート。5月初旬には「意識も朦朧としているはずなのに、両手をゆっくりと鍵盤に乗せ、愛おしそうに鍵盤を押しました。もう上半身の自由は奪われ、手にほとんど力は入らない状態です。指先に、体すべての力を気迫で集めているようでありながら、鍵盤に触れる手の動きはいつもの彼らしくエレガントに見えました。極限状態であっても音楽を愛している旭の姿に、家族は圧倒され、言葉を失い、見守りました」。

 5月18日は次作CD「光のみずうみ」の入稿日。希さんは「旭は入稿を見届け、翌々日、自分でそのタイミングを決めたように旅立ちました。今頃、旭は自由に走り回り、以前のように手書きで音符を記している気がします。そして、旭を知ってくださった皆様、応援してくださった皆様の中で、生き続けてくれるよう感じています。旭の音楽が種となり、どこかで思わぬ芽を出してくれるかな、と想像したりもします。皆様とのご縁から生まれる、あらゆる可能性を信じたいと思っております」と愛息への思いをつづった。

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2016年5月28日のニュース