壮絶看護で「本当の愛を知る物語」百田氏「タイトルは彼女のために」

[ 2014年11月7日 05:30 ]

たかじんさんが残した膨大なメモの一つ。愛を知らなかった男が本当の愛を知り「まだ死ぬんは嫌や」と書き残した

百田尚樹氏 新著「殉愛」

 たかじんさんと面識がなかった百田尚樹さん。筆を執ったのは、生前のメモに「僕の本をだすなら、百田に助けてもらう」と残されていたため。昨年3月のしのぶ会でさくらさんと出会った際にそのことを知り、2年間の闘病生活の様子が分かっていく中で「愛を知らなかったやしきたかじんという男が、本当の愛を知る物語」を書きたいという境地に至った。

 百田氏によると、さくらさんは、実際に闘病に入ってからの約700日の1日たりとも彼のそばを離れず、24時間を看病に費やした。壮絶で過酷な看護の日々に体重は8キロ減り、突発性難聴になった末に左耳の聴力を失ってしまったというからすさまじい。

 おむつ交換、パジャマの洗濯、シーツの交換、便秘の時には肛門に指を入れて硬くなった便を指でかき出すことまでした。そして、痩せて寒がりになっていた彼のため、70度前後の熱湯にタオルを漬けてから体を拭いてあげていたため、手のひらの皮が全てむけていたという。

 また、たかじんさんは無音のICU(集中治療室)に長時間いることで幻覚を見たりする「夜間譫妄(せんもう)」になり、浮気相手と間違えて話しかけ、さくらさんの顔を突然殴ったこともあった。

 「遺産目当ての女」と疑う報道もあったが、たかじんさんは遺言書で数億円以上の預金全額を盲導犬協会などに寄付。さくらさんが受け取ったのは東京と大阪のマンションの権利だという。

 たかじんさんのメモにはさくらさんと会ったことで「まだ死ぬんは嫌や」と書いてあり、最後のメモにも「ここにきて命も寿命も受け入れられんのは、本間に会うべき人間と会ってしもたから」と残している。百田氏はスポニチ本紙の取材に「取材中に何度も泣いたし、書きながら何度も泣きました。殉愛というタイトルは彼女のためにあります。もう二度とこんな本は書けません」と明かした。

続きを表示

この記事のフォト

2014年11月7日のニュース