[ 2010年8月29日 06:00 ]

 一方、米国出身の女性演出家フランチェスカ・ザンベロ(再演演出クリスティアン・ラス)らによるステージは、写実的ではないものの、台本には比較的忠実な運びとなっており、オーソドックスといえるもの。ステージ中央に井戸の代わりに預言者ヨカナーンが監禁されている穴があり、そこから紗幕で作られた筒のようなものが天に向かって伸びているシンプルなセット。この紗幕が天界へ通じる道を連想されるのと同時に、ステージ上に半死角を生み出し、それを軸にして光を細かくコントロールすることによって、その場の状況やサロメをはじめとする登場人物の心理状態の変化を表わす手法が取られていた。「サロメ」のような作品は昨今では大幅な読み替えが施されることも珍しくないが、今回のように視覚的に美しく穏当な演出に接すると忘れていた作品の本質を改めて思い出させてくれるように感じられた。

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2010年8月29日のニュース