阿久さんの遺志継ぐ「今ありて」大合唱

[ 2008年3月23日 06:00 ]

観客に手拍子を要求し「今ありて」を歌う谷村新司

 歌手の谷村新司(59)が22日、甲子園球場で第80回選抜高校野球大会の開会式に先立つセレモニーに参加、大会歌「今ありて」を披露した。同曲は昨年8月に70歳で死去した阿久悠さんが作詞、谷村が作曲したもの。谷村は「阿久さんがこの場にいらしたら、さぞ喜ばれただろう」と話した。

 節目の大会。阿久さんと一緒に聖地に立つことはかなわなかったが、生涯高校野球を愛し抜いた魂が、変わることなく甲子園にあることを谷村は感じていた。
 「歌っているとき、阿久さんがそこに来てた感じがしました。すごくうれしそうにしてらした…」。
 93年に産声を上げた「今ありて」。印象的な「♪ああ~甲子園~…」のサビのフレーズとともに、広く親しまれてきた。初めて流れた第65回大会では、バックネット裏で2人並んでこの曲が流れるのを聴いた。
 80回目の今大会で、自身の名曲が再び浴びたスポットライトを見届けることなく阿久さんは亡くなった。「歌詞をかみしめながら歌いました」。雲一つない青空の下、神戸山手女子高の生徒らによるコーラスをバックに、朗々とした歌声がグラウンドに響く。そしてその歌はいつしか、客席中に広がった。
 「♪今ありて 未来も扉を開く――」谷村は詞に託された思いを代弁する。「今という一瞬にベストを尽くして戦う。そして敗れてなお勝者を称える。そこに人として最も大切なものがある。甲子園はそれを学ぶ場所」。
 まるでその場に居合わせた全員が、阿久さんの遺志を継ぐかのような大合唱。「先生と作ったこの歌が16年も歌い継がれていることに、あらためて感動を覚えた」
 春の甲子園にこの曲が流れる限り、巨星が高校野球に込めた熱い思いも永遠に残り続ける。

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2008年3月23日のニュース