【浜田剛史 我が道1】約40年前でも…「3分9秒」全部覚えています
3分9秒ですから。全部、覚えてますけどね、あの試合は。
相手が、目を開いたまま倒れていったんですね。それで、ニュートラルコーナーに歩きますよね。そしたら、お兄さんでトレーナーのリカルドが、見えたんですね。
タオルを持ってエプロン(リングの縁)を歩いてきたんですよ、弟を見ながら。このとき、俺は「立ってきたら、やる」と思っていたけど「中に入ったら試合が終わるぞ」とも考えてました。
でも、コーナーに着いて振り向いたら、相手は動いていない。大歓声でレフェリーのカウントは聞こえなかったけど、「終わったかな」と思いましたね。意識なかったんで。
もうすぐ、40年になりますか。1986年(昭61)7月24日、俺は、初めて世界タイトルに挑戦した。世界王者になるには実力10%、運90%と言われた時代ですね。いつ巡ってくるか分からない運が来たとき、実力がなければいけない。今勝負、今勝負と思って日々、練習ばかり、やってましたけどね。
高校を卒業して上京し、帝拳ジムに入門してから、ボクシング以外のことは何もしなかったですね。世界王者を目指すなら、当たり前と思ってました。結果として、練習のやり過ぎでしたけどね。
世界初挑戦にたどり着くまでに、左拳を4回、骨折して、2年のブランクをつくった。右膝を痛めたときは、階段を上れなかった。少し痛いときに練習量を落としておけば、遠回りしなくて済んだかもしれない。
ただ、振り返ると、それが遠回りだったのかどうかは、分からないですよね。左拳を骨折した間、右パンチの練習ばかりした。打たれ強い体をつくる時間もあった。今は、あの遠回りは必要だったと思ってますけどね。
WBC世界ジュニアウエルター級(現スーパーライト級)王者のレネ・アルレドンド(メキシコ)は、強い王者でした。長身で動きがしなやかで、防御がうまく、左右ともパンチが強かった。35勝33KO2敗の25歳。下馬評は、アルレドンドが圧倒的有利でしたね。
俺は、やっと運が巡ってきたんだから、取り返しのつかないことをやっちゃいけないと、強く思っていました。4回までにスタミナを使い切るつもりだった。だから、3分9秒を全部、覚えているんですけどね。
我が道のお話を頂いて、約40年ぶりに現役時代を振り返ってみることにしました。青春の全てをボクシングに費やした。大きく遠回りして、やっと巡ってきた運を逃さず、夢だった世界王者になることができた。ちょっと頑固な男・浜田剛史の半生記ですね。
◇浜田 剛史(はまだ・つよし)1960年(昭35)11月29日生まれ、沖縄県出身の65歳。沖縄水産高で高校総体王者。帝拳ジムからプロデビューし、84年12月に日本、85年7月に東洋太平洋のライト級王座を獲得。86年7月にレネ・アルレドンド(メキシコ)を衝撃的な初回KOで破り、WBC世界スーパーライト級王座を獲得した。戦績は24戦21勝19KO2敗1無効試合。現在は帝拳ジム代表。
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