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“戦うシングルマザー”と「ボクシングと結婚した」苦労人 人生を懸けて戦う2人の女性

[ 2019年6月19日 08:00 ]

ベルトを手にファイティングポーズを決めるWBO女子世界スーパーフライ級王座決定戦を争うケーシー・モートンと吉田実代(撮影・木村 揚輔)
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 ボクシングのトリプル世界戦が19日夜、千葉・幕張メッセで開催される。メーンは日本人男子初の4階級制覇に再挑戦する井岡一翔(30=Reason大貴)とアストン・パリクテ(28=フィリピン)のWBO世界スーパーフライ級王座決定戦だが、ぜひWBO女子世界スーパーフライ級王座決定戦にも注目してほしい。確かに男子に比べ、女子は世界戦と言えどもレベルが高いとは言えないかもしれない。それでも夢を追い求め、人生を懸けて戦う姿は男子も女子も同じだ。

 空位の王座を争うのは吉田実代(31=EBISU K’s BOX)とケーシー・モートン(35=米国)の2人。吉田は17年10月に高野人母美(協栄)を下して初代日本女子バンタム級王者となり、昨年8月に東洋太平洋女子同級王座も獲得した“戦うシングルマザー”だ。20歳で単身ハワイに渡り、格闘技修行。キックボクシング、総合格闘技などを経て14年にボクシングに転向。デビュー後に妊娠が発覚し、結婚、出産、そして離婚と波瀾万丈の人生を歩んできた。

 当初はシングルマザーであることを明かしていなかったが、日本タイトル獲得を機に公表し、“戦うシングルマザー”としてメディアに取り上げられるようになった。スポーツ・インストラクターとして働きながらプロボクサーとして活動、そして育児と悪戦苦闘の毎日だが、4歳になった愛娘の存在がモチベーションでもあり、心の支えにもなっている。そして「娘に人間的にも成長させてもらっている」という。

 「赤ちゃんの時からジムに来ているので、ボクシングのことも理解していて、保育園で先生や友達に『ママは今度、世界戦なんだよ』って自慢しているみたい。すごく楽しみにしてくれています。私が疲れている時には『頑張ってね』って言ってくれたり、頭なでなでしてくれたり…空気を読むんです。娘にとってカッコいいママであり続けるためにも世界チャンピオンになりたい。シングルマザーの人、母だけど夢を追う人たちに良い影響を与えることができたらうれしいですね」

 対戦相手のモートンはハワイ出身で、現在はサンフランシスコ在住。本人によると「孤児院で育った」そうで、父親が米国人で母親が日本人とのこと。ボクシングを始めた理由を「自分の内面の怒りを吐き出すために、神様が導いてくれた」と説明した。配偶者について問われると、笑顔で「ボクシングと結婚した」と答えた35歳は、前日計量では自ら髪の毛を約20センチ切ってリミットの52.1キロでクリア。「この試合を長年待ち焦がれていた。たくさんトレーニングもしてきた。世界王者になる夢を実現したい」と話した。

 両者にとって人生の分岐点になるであろう一戦。間違いなく、技術以上に気持ちをぶつけ合う試合になる。2人のサイドストーリーに着目すれば、違う楽しみ方もできるはず。はたして勝利の女神はどちらにほほ笑むのだろうか?(大内 辰祐)

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2019年6月19日のニュース