ロボット審判イイじゃん! ABSチャレンジ導入1カ月“新しいストライクゾーン”の現在地

[ 2026年4月22日 05:00 ]

自身の投球がボール判定されチャレンジするドジャース・大谷
Photo By スポニチ

 【MLB BUZZ】大リーグは今季、ストライク、ボールの判定を機械が補助する「ロボット審判」による自動投球判定(ABS)チャレンジを導入した。開幕から約1カ月が経過したが、成果や課題は何か。各球団の選手や番記者、ファンに聞いた。テクノロジーによる変革の波は止まらず、野球がまた一つ大きく変わる。(取材・大リーグ取材班)

 7日、トロントでのドジャース―ブルージェイズ戦の7回。カウント1―2からの4球目、山本が岡本に投じた外角スライダーはストライク判定で見逃し三振。すぐさま岡本が右手でヘルメットを数回叩き、ABSチャレンジに成功して判定はボールに覆った。

 スタンドから大歓声が響き渡る中、岡本は外角直球を捉え、右中間への二塁打を放ち「(チャレンジを)迷ったら三振になるのでいった。自分にとってチャンスになったので何とか出塁しようと思った」と振り返った。

 検証過程は各球場の大型ビジョンに映し出され、観客も一緒に判定をインチ単位で確認できる。ため息に包まれることもあれば、岡本の時のように大歓声が湧き起こることもある。

 ここまで選手側からは好意的な意見が大半を占める。この場面で打たれた山本も「不利や、有利になったりはあるけど、正しい判定をしてもらえるのは凄く好きだなと思う」と語り、大谷も「見る方もやる方も、審判の方にとっても全体的にいい」と歓迎している。

 1日のオリオールズ―レンジャーズ戦は、ABSチャレンジで初めて試合に決着がついた。元ヤクルトのオ軍の右腕スアレスが8―3の9回2死走者なし、カウント1―2からの直球がボール判定されたが、オ軍の捕手バサロがチャレンジを要求。外角高めに入っていることが確認され、オ軍が勝利した。バサロは「この時点でチャレンジは2回残っていた。温存するより、使った方がいい」と語り、スアレスは「ストライクだとは思っていなかった。結果的にうまくいって良かった」とうれしさと驚きが入り交じった様子だった。

 一方で、ド軍の捕手スミスの視点はやや異なる。「自分のフレーミングでストライクだと思った判定がボールとコールされたことへのいら立ちはある」。フレーミングとは、捕手が際どいコースを、捕球技術によって審判をストライクの判定に誘う技術のこと。今季はストライクをボールに見せてABSチャレンジでのミスを誘う“逆フレーミング”も確認されており、捕手の捕球技術は新たな世界線に入っている。

 20日時点で1357回のチャレンジがあり、725回判定が覆り成功率は53%。投手の成功率が39%、打者は46%で、捕手は精度が高く60%だった。傾向としてはストライクゾーンは狭まり、四球の増加が指摘される。特に高めのストライクゾーンがボール判定となったと指摘する声は多く、ABSでは高めの端は選手の身長の53・5%だが、以前の審判員の基準は身長の55・6%付近だったと関係者は指摘する。

 もっとも、ファンの盛り上がりがこの新ルールの一番のサプライズだったかもしれない。オレンジカウンティ・レジスター紙のビル・プランケット氏は「判定が覆っても、そのままでも大きな歓声が上がる。それは驚きだった」と言う。さらに「どれだけ際どい判定だったか分かるのも面白い。ストライクゾーンから約1センチ外れているなど、選手や審判の精度の高さを実感する」と付け加えた。

 ≪一番は審判員の理解…NPBは導入前段階≫NPBでは導入可否の本格議論に至っていない。中村勝彦事務局長は「審判にトレーニングして、“引き続き精度を上げていきましょう”という話になっています」と語り、ABS導入の前段階にとどまっていることを説明した。審判員の技術向上アプリがあり、同アプリをより精密に作り替えて、ストライク、ボール判定のトレーニングに生かしていこうとする意見があるという。ABSに活用できる技術でもある一方で、実際に試合で「チャレンジ制度」を導入するためには、審判員の労働組合の理解を得ることが一番の課題になりそうだ。

 ≪フルカウント、得点圏、満塁…“勝負どころ”で積極的に≫【大リーグ公式サイト データ班 デビッド・アドラー氏】データから特徴的なのは“重要な局面”で積極的にチャレンジしていること。フルカウントや、得点圏、満塁の状況ではかなり多い。負ける可能性があってもリターンが大きいからリスクを取る、という判断だと思う。

 捕手や投手は7回以降に回数が大きく増えるし、打者は8回以降に一気に増える傾向がある。「序盤で無駄に使いたくない。勝負どころで使いたい」という考え方も見える。

 成功率で優秀なのはロイヤルズの捕手ペレス。21度で、16度成功だ。ドジャースのスミスは24度と積極的に挑戦し、成功は15度で失敗も9度と多い。一方、タイガースのディングラーは勝てそうな場面を選び、13度しかチャレンジしていないが、そのうち11度も成功している。

 チームごとの傾向も分かれ、分析部門がしっかりしたツインズは投打両面で積極的。レッドソックスは慎重だ。ドジャースは守備時にはかなり使うが、打者は控えめ。一方でタイガースやオリオールズのように打者の方で積極的にチャレンジして、守備側ではやや控えめなチームもある。

 ≪監督含めベンチからはNG≫▽ABS(ロボット審判)システム 「Automated Ball―Strike System」。打者、投手、捕手がストライク、ボール判定に不服がある場合、異議申し立てできる。監督を含めベンチからは行えない。各チーム2回のチャレンジ権が与えられ、成功した(判定が覆った)場合は回数は減らない。選手は投球から2秒以内にヘルメットや帽子を叩く動作で審判に知らせる。計測システム「ホークアイ」の投球追跡データで判定される。横幅はホームプレート幅と同じ17インチ(約43センチ)。上端は各打者の身長の53.5%で、下限は27%となり、ホームプレートの真ん中通過時の平面で判定される。

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

野球の2026年4月22日のニュース