【馬淵史郎 我が道23】勝つために1%でも確率の高い作戦に徹する 馬淵流を貫き日本初の世界一

[ 2026年3月24日 07:00 ]

23年U―18W杯で優勝し、胴上げされる
Photo By 共同

 台湾でのU―18W杯に出場するメンバーを前に「全員にバントを指示する可能性がある。そのつもりで準備しろ」と20選手に訓示した。真剣勝負の世界大会はホームベースの踏み合い。パワーで対抗しようとしても、うまくはいかない。そう考えて編成した。監督を受けた以上、自分の考えは貫かせてもらう。大型選手を入れるべきだと考えるなら、そういうのが得意な監督にすればいいと割り切った。

 自主性を尊重するタイプの慶応や仙台育英の選手もいたが、勝つために1%でも確率の高い作戦に徹するという、こちらの考えを全員がしっかり理解してくれた。起床、点呼といった団体行動も国内合宿、台湾でも誰ひとり遅れない。甲子園で注目されても、チヤホヤされるのが当然というのもいなかった。世界一という目標をみんなが共有してくれた。「最後は人間やな」と開幕前から手応えがあるチームになった。

 23年(令5)のW杯。オープニングラウンドは4勝1敗で突破した。前回優勝した米国戦では前田悠伍(大阪桐蔭、現ソフトバンク)が5回2/3を4安打無失点無四球と最高の投球を展開。4―3で勝利できた。前田は夏の甲子園に出られなかった悔しさをバネに、W杯に準備をしてきたものを出してくれた。

 決勝進出をかけたスーパーラウンドでも韓国に7―1、プエルトリコに10―0で連勝し、決勝進出を決めた。決勝の前哨戦となる台湾戦は2―5で負け、2位での決勝進出となったが、完全アウェーの雰囲気はしっかりつかんだ。あくまで目標は翌日の決勝で勝つこと。前哨戦ではバントも封印した。

 決勝は9月10日に台北・天母野球場で行われた。先発は前田。初回に1点の先制を許したが、日本は4回に小技や機動力を発揮した。先頭の緒方漣(横浜)が四球で出塁し、武田陸玖(山形中央)の犠打で1死二塁から、丸田湊斗(慶応)が自分の判断で、一塁側へセーフティーバント。アウトの判定も、ビデオ判定でセーフに覆った。1死一、三塁から髙中一樹(聖光学院)が同点のスクイズに成功。さらに三塁手の悪送球の間に一塁走者の丸田は、一気に本塁を陥れて逆転に成功した。少ないチャンスを得点につなげる。目指した日本の野球の姿だった。

 このリードを前田が7回4安打1失点完投で死守。全員が与えられた役目を果たし、日本の高校野球の代表として世界一を果たしてくれた。U―18W杯では日本史上初の優勝。スタッフと選手が目標をひとつにして、目指した野球を貫いた結果だと感激した。

 MVPには打率・571で首位打者となった緒方が輝き、前田とともに先発の柱になった東恩納蒼(沖縄尚学)がベスト9に選ばれた。チーム打率・303、長打率・408は参加12チームでトップ。スモールベースボールだけではない、強いチームだった。

 ◇馬淵 史郎(まぶち・しろう)1955年(昭30)11月28日生まれ、愛媛県八幡浜市出身の70歳。三瓶高―拓大。83年に社会人の阿部企業で監督に就任、86年に都市対抗初出場、日本選手権で準優勝。90年から明徳義塾の監督に就任、02年夏の甲子園で優勝。監督として甲子園通算39回出場(春17回、夏22回)は歴代1位。甲子園55勝は歴代4位。23年には日本代表監督としてU―18W杯優勝を果たした。

続きを表示

この記事のフォト

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

野球の2026年3月24日のニュース