【内田雅也の追球】言い訳なき「ひーさん」

[ 2026年2月9日 08:00 ]

練習試合   阪神4―8日本ハム ( 2026年2月8日    名護 )

初回、強風の中で邪飛をキャッチする佐藤輝
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 エナジックスタジアム名護の玄関で岩本賢一と待ち合わせた。日本ハムの球団幹部だ。チーム統括副本部長兼ベースボールオペレーション統括部長という肩書である。

 今は日本ハム監督の新庄剛志が2001年、阪神から大リーグ・メッツに移籍した当時、通訳を務めた。以来、交流が続いている。

 こちらの身なりを見た岩本は「それ、何ですか?」と聞いてきた。胸に「PAWSOX」と刺しゅうのあるウインドブレーカーを着ていた。米マイナー、3Aポータケット・レッドソックスの愛称である。02年4月25日、メッツ・小宮山悟(現早大監督)が3Aに降格となり、ポータケットで投げた。ニューヨークから取材に出向いたが、東海岸北部の春先はあまりに寒く、球場で買った品だった。この時も岩本が通訳だった。

 この日はそれほど寒かった。気温8度ほどだが強い北風が吹き、体感温度は相当に低い。琉球方言でいう「ひーさん」「びーさー」。それでも練習試合は行われた。バックネット裏のスタンドに設けられた記者席にいても震えがくる。がまん大会のように辛抱した。

 選手も監督も誰も彼も寒そうなそぶりを見せなかったのに感じ入る。背中を丸めている者などいない。平然としていた。

 野茂英雄もイチローも松井秀喜も……そして新庄も藤川球児も……大リーガーたちはよく「自分がコントロールできないことは気にしない」と語っていた。天候やグラウンド状態、審判の判定……など周囲を気にせず、自らの職務に没頭する。藤川がいま、テーマに掲げる「没頭」である。

 日本でも明治期、国内最強を誇った一高(今の東大)の名左腕、守山恒太郎の言葉に「ノー・コンディション」がある。二塁手だった君島一郎が著した『野球創世記』に<コンディションがこうだ、ああだというような自己弁護を許さぬ、つまり「言い訳無用」の意味ととる>とある。

 適時失策したキャム・ディベイニーも「ボールの跳ね方やグラウンド自体に慣れていかなければいけない。もっと練習を重ねて取り組んでいければと思ってます」と言い訳などしなかった。

 朝は名護湾に虹もかかっていた。「ノー・レイン、ノー・レインボー」という。雨が降らないと虹も見えない。課題という雨のなか、達成という虹を見る。今はそんな時である。 =敬称略= (編集委員)

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