【内田雅也の追球】生まれ変わる球春

[ 2026年2月2日 08:00 ]

ゴムチューブを使ってトレーニングする阪神・佐藤輝(撮影・北條 貴史)
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 現状維持は退歩や衰退という考え方がある。たとえば福沢諭吉は『学問のすすめ』で「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む」と説いた。渋沢栄一やウォルト・ディズニーも口にし、書き残している。最近では大谷翔平も同じ趣旨の話をしているそうだ。

 変化を恐れず、常に進歩していく姿勢が必要なのだろう。

 阪神・佐藤輝明は宜野座でのキャンプ初日を終え、昨年から変えたことを問われ「全部変えてます」と答えた。そして「去年と全く一緒っていうのはないし、毎年変えてます」と言った。

 昨季、本塁打王、打点王を獲り、最優秀選手(MVP)に輝いたが、その実績で満足している様子はない。変化や進歩の激しい野球界にあって、現状維持では退歩につながるという考え方をしているのだろう。だから「全部変える」「毎年変える」のである。

 野球選手の正月と言われるキャンプである。元日にあたるキャンプインを迎えると、新しい年を迎える。そして、生まれ変わるのだ。

 1970―80年代に大リーグ・ドジャース、パドレスで活躍したスティーブ・ガービーは毎年、キャンプを清新な気持ちで迎えた。ドジャース時代、フロリダ州ベロビーチのキャンプ地に入り、次のように話した。

 「ネコは九つの命をもつというが、春のキャンプも同じようなものだ。野球選手はキャンプの春が巡って来る度に、新しく生まれ変わるのだ」

 『100万回生きたねこ』(佐野洋子・講談社)という絵本がある。今は大学生の娘や息子に読み聞かせした。主人公のネコはさまざまな飼い主のもとに生まれ変わる。

 時代は変われど、キャンプインの心境は変わっていないだろう。

 監督・藤川球児も「チームを一度壊す」「ゼロから作りなおす」と語っている。リーグ優勝という昨年の栄冠に満足してはいない。前日の全体ミーティングでは「連覇」を禁句にしようと選手たちと約束したそうだ。

 思えば昨年11月、日本シリーズ敗退後、高知・安芸での秋季キャンプ打ち上げで、藤川は参加した若手選手に向け「来年2月“別人が来た”と思える状態になってくれれば」と期待した。

 球春到来。選手もチームも生まれ変わる希望に満ちている。=敬称略=(編集委員)

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