【親子2代PL学園主将 新たな挑戦①】息子が目指すのはビジネス界での成功「いつか父親を超えたい」
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戦うフィールドは異なる。だが思いは共通する。親子2代で名門・PL学園硬式野球部の主将を務めたロッテ・松山秀明チーフ内野守備走塁コーチ(58)と長男の松山和哉さん(31)。父は9年ぶりにロッテに復帰し、長らく優勝から遠ざかるチーム再建の一翼を担い、息子は昨年11月にスポーツ経験者をメインにした転職支援サービスを行う会社「FK.relations」(https://fkrelations.co.jp/)を起業。ビジネスの世界での成功を目指している。戦う場所こそ違えど目指す場所は同じ。紡いできた「絆」を背景に“親子鷹”でそれぞれの頂点を目指す。(取材・構成 櫻井 克也)
夢へ向かい、力強く一歩を踏み出した。24年11月に転職支援サービスの会社を立ち上げた松山和哉さんは全力で走り抜き、「土台を固める期間」と位置付けた1年を終えた。
「とにかく必死に動き回った1年でした。僕は働くことが大好きですし、時間を忘れて、どこまでも働けてしまう性質なので、苦労やしんどさを感じたことはありません。企業も顧客の方も、そして我々も、関わった全員が幸せになれるように。それを目指しています」
甲子園大会で春3度、夏4度の優勝経験を持つ名門・PL学園、さらに関西学生野球連盟に所属する関大で主将を務めた若き社長は、充実感に満ちた表情だった。
大学卒業後は大手食品会社に就職。3年間務めた後、新たな可能性を求め不動産業界へと転職した。年収、仕事のやりがい、私生活。すべてが、それなりにそろっていた。それでも心のどこかに消化しきれないものを抱えていた。
「周りにプロ野球選手が多いんです。彼らはもう何千万と稼いでいる。結構、働いて、年収に関してはある程度、サラリーマンの限界値に近しいところまでは行けた自負があります。ただ、それ以上に行くためには自分でやるしかない、と考えました」
同学年には同じ関西学生リーグでしのぎを削った立命大の辰己涼介(楽天)、東克樹(DeNA)、さらに近大の小深田大翔(楽天)、畠世周(阪神)など多くのプロ野球選手がいる。ライバル意識がさらなる高みを目指すための原動力となった。
起業に踏み切ったのは、一番身近な存在から受けた影響、刺激も要因だった。父の秀明氏はPL学園で85年春の甲子園大会準優勝、夏の大会で全国制覇を経験。主将として同学年の桑田真澄、清原和博ら個性あふれる選手達をまとめ上げ、チームを頂点へと導いた。高校卒業後は青学大に進み、4年時には主将に就任。1989年ドラフト5位でオリックスに入団した。
選手としては9年のプロ生活で126試合の出場だったが、特筆すべきは指導者としての経歴だ。現役引退翌年の98年からコーチを務め、阪神、ソフトバンク、ロッテ、そして韓国プロ野球・起亜と5球団で2軍監督などを歴任。選手として球界に足を踏み入れてから、ユニホームを脱いだことは一度もない。コーチ生活は来季で29年目を迎える。
「影響を受けたのは全ての面です。ものの考え方から、それに向けてどう行動するかとか全てです。もちろん、僕の中でいつまでも凄い存在ではあるのですが、いつか父親を超えたいというのはモチベーションの一つです」と言う。父は自らの腕1本で厳しい勝負の世界を生き抜いてきた。生きていく世界こそ異なるが、自らも勝負するために、ビジネス界の荒波に舟をこぎだした。
幼少期の夢はもちろんプロ野球選手だった。「一番身近にいる人がプロ野球選手だったので、自分も当たり前に“プロ野球選手になれる”って思っていました」。だがPL学園入学後、すぐに身近な存在が高く強い壁であったことを知る。
「物心ついた時はコーチでしたし、中学までは親父の凄さが分からなかったんです。でも高校に入って、どれだけ凄い選手、主将だったかというのを周囲の人から聞くじゃないですか。僕が2年の時に代打で試合に出てヒットを打ったら全部、新聞に載せてもらいました。代打でしかもヒット打っただけで…ですよ」
今となっては笑顔で振り返ることができる。だが常について回る“松山の息子”の冠が、重かった時期もある。父親の凄さは認めるが、自分は自分。東京の大学へ進学する道もあったが、父の名と距離を置くために当時、PL学園の先輩がいなかった関大へと進学した。
関大でリーグ戦デビューしたのは3年の春。「それまではAチームにも入れませんでした」と笑う。それでも4年時には主将に選ばれた。そして高校時代を含め、初めての全国大会となる明治神宮大会に主将として出場。ひた向きに野球に取り組み、チームをまとめることに腐心する中、父親への意識は少しずつ変わっていった。
「野球の実力は圧倒的に親父の方が上。天と地の差です。でも、親父と同じように大学でも主将に選んでもらえた。匹敵する何かがあるのか、親父にはない何かがあるのか…。自分という人間を深く考えた時間でもありました」
タイプは全く違う。だが結果的に進む道は重なった。自分に揺るぎない自信を持てるきっかけとなった時期でもある。
野球に打ち込んでいく中で、自分の名が重荷となっていることは分かっていた。だが秀明氏はあえて、野球の技術を含め、アドバイスすることはなく息子の成長を見守った。そこには秀明氏の熱い思いがあった。(②に続く)
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