【内田雅也の追球】伝説を語り継ぐ日

[ 2025年11月24日 08:00 ]

ファンの前であいさつする藤川監督
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 阪神ファン感謝デーを見終えて、甲子園駅から阪神電車に乗った。ファンの人たちといっしょで満員だった。

 「さっき、安藤さんを見たんだよ」と中年男性が夫人と思われる女性に話している。「監督だったころを思いだすなあ」

 安藤統男は86歳になった。今年、吉田義男も小山正明も逝き、この日のOBでは最年長である。「足が弱ってなあ」と言いながら、歩みはしっかりとしていた。

 電車の中でお年寄りが「藤田平が格好良かったなあ」と、孫だろうか、男の子に語りかけていた。「昔のおじいちゃんのころの大スターだよ。今日と同じように3番ショートでなあ……」

 確かに背番号「6」を背負い、バットを寝かせ気味にすっと立つ、打席での構えは現役時代そのものだった。後に、そんな話をすると藤田は「そうやろ」と、まんざらでもない顔で笑っていた。

 OBチームと現役チームとの試合である。OBは1番・ライトで真弓明信、2番に亀山努、4番・サード、掛布雅之……オールドファンが喜ぶラインアップだった。

 掛布は打席までゆっくり歩み、バットを立て、投手を見すえた。現役時代そのものだった。掛布の全盛期、阪神ファンのタレント・上岡龍太郎は話していた。「ネクストバッターズサークルでの所作、打席に向かう背中が好きなんだ。打つ、打たないはどうでもいい」

 先のイベントで亀山は一塁にヘッドスライディングし、ユニホームが汚れていた。場内から喝采を浴びたが、背番号「00」の代名詞を知らない世代も多くなった。

 それは親から子へ、子から孫へと語り継ぐべきことがらだろう。映画『フィールド・オブ・ドリームス』で主人公の農場主が父から聞いた、“シューレス”ジョー・ジャクソンがいかにすごかったかを娘に語る。米作家ロジャー・カーンの言う通り「野球は父子相伝の文化」なのだ。

 そういう点で、この日は意味があった。球団創設90周年とあって多くのOBが集まっていた。

 監督・藤川球児はあいさつで「ご家族3世代でタイガースが好きという方がおられるかと思います」と語りかけた。前日のパレードでも「子どもたちもいた。次世代もいくぞ、とうれしくなりました」と話していた。

 レジェンドが集まったこの日は未来に向けても大切な日だった。 =敬称略= (編集委員)

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