【内田雅也の追球】祭りの後の「前哨戦」

[ 2025年9月10日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0-3DeNA ( 2025年9月9日    甲子園 )

<神・D(20)> テレビ解説を務める岡田顧問(左)と井川慶氏(撮影・大森 寛明)
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 祭りの後と言えばいいだろうか。甲子園球場にはどこか落ち着いた空気が流れていた。7日に優勝が決まり、8日は試合がなかった。優勝決定後初めての試合だった。

 入場券は完売なのだが空席も目立った。年間予約席で観戦を控えた人も多かったろう。あの優勝に向け、燃えさかるようだった熱気はもうない。

 そういうものだ。ファンも選手も誰だって、優勝達成の後の心には穴も空くし、緩みもする。

 敗戦後、阪神監督・藤川球児も淡々としていた。「負ければ糧にして。課題が出たから良かったんじゃないですか」

 相手のDeNAは目下3位。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの相手となるかもしれない。CS前哨戦と見立てた場合、嫌な敗戦とも言える。昨年もCSファーストステージで連敗している。

 試合後、DeNAの応援団が左翼席で「阪神倒せ! ベイスターズ」と叫んでいた。相手は失うものはないと向かってくる。昨年日本一となったような「勢い」が出れば怖い相手になる。

 何しろ左腕アンソニー・ケイは難敵だ。この夜は7回3安打無得点に封じられた。ケイから見て阪神戦は今季7試合目で初勝利(1勝2敗)だが、防御率は0・57、被打率1割3分5厘である。

 主力打者の対戦成績を見ても、佐藤輝明は21打数―6安打、1本塁打とまずまずだが、森下翔太18―0、大山悠輔16―1とほぼ打てていない。右打者は内角を攻められ、苦しんでいるようだ。

 テレビ解説で前監督、球団顧問の岡田彰布がCSに向け、ケイ攻略法があるのなら「CSに取っておいてもいい」と話していた。そんな秘策や虚実の駆け引きもあろう。

 この日は「重陽」だった。9月9日。中国で「陽数(奇数)の極」とされる「九」が重なる日である。

 野球を愛した俳人、正岡子規が随筆『筆まかせ』で野球を紹介する際、<ベース、ボールは総て九の数にて組み立てたるものにて、人数も九人づつに分ち、勝負も九度とし――>と書いた。そして<九は陽数の極にてこれほど陽気なものはあらざるべし>。

 なるほど、野球は陽気なのだ。誰も「疲れた」などと口にしないだろうが、目に見えない優勝疲れはある。また、陽気なプレーが見られる日はやってくる。 =敬称略=
 (編集委員)

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