【内田雅也の追球】打席から見える景色

[ 2025年8月7日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-2中日 ( 2025年8月6日    バンテリンD )

3回、同点打を放つ近本
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 ウイニングボールは天井に当たったかもしれない。高くて難しい中飛だった。バンテリンドームでは天井に当たっても落ちてくればボールインプレーだ。延長10回裏2死一塁、細川成也の飛球を近本光司は大事そうにつかんだ。そして笑顔が浮かんだ。

 決勝点となる生還も近本だった。延長10回表、1死満塁、大山悠輔死球での押し出しだった。ゆっくり、そっと大事そうに踏んだ。

 この回先頭として橋本侑樹の直球を三遊間突破の左前打で出塁。この夜4本目だった。4安打以上は今季5度目。バンテリンドームでは3安打猛打賞も初めてだった。

 8回表も先頭で右翼フェンス直撃の二塁打を放ち、同点の生還を果たしている。

 3回表は2死二塁から柳裕也の低めフォークを拾うように打ち、左前に同点打を放っていた。

 この夜は4安打も打ったが、今季はバンテリンドームで打てていなかった。首位打者や最多安打を争う好打者が、このバンテリンドームでは32打数5安打、打率1割5分6厘だった。

 チームとしても今季、セ・リーグ本拠地球場で最低のチーム打率2割2分6厘と苦手にしていた=成績は5日現在=。

 もともと投手有利の「ピッチャーズパーク」で知られる。広いフィールド、高いフェンス、それに傾斜のきついマウンドが打者を悩ませる。中日で現役捕手だった谷繁元信が2011年、オールスター戦テレビ中継のゲスト解説で語っていた。「マウンドが他の球場よりも傾斜がきつい。その分、角度がつく。普通のスライダーも縦スラになる。微妙な変化に打者の感覚が狂うのでしょう」

 打者は相手投手だけでなく、球場別の傾向と対策も重要である。落合博満は球場ごとに<景色としての記憶は鮮明にあった>と著書『超野球学』(ベースボール・マガジン社)で書いていた。<投手のモーションからボールの軌道までをひとつの景色としてとらえる>。投手後方の中堅フェンスやバックスクリーンの色、形、さらに広告看板など背景も含め、投手ごとにバンテリンはバンテリンの、甲子園は甲子園の……景色として映像記憶するわけだ。

 近本も対策を練り、落合のように、打席での景色を頭に入れて臨んだのだろうか。優勝マジックを減らし、頭に描くのは歓喜の景色だろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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