【内田雅也の追球】「昭和100年」の教訓

[ 2025年4月30日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-4中日 ( 2025年4月29日    バンテリンD )

5回、涌井に四球を与えた才木
Photo By スポニチ

 「四球は投手のエラーだ」という言い方がある。四球をとがめる警句である。実際に1880年代の大リーグ(ナショナル・リーグ)では四球はじめ死球、暴投、ボークが投手の失策として記録されていた。

 先の警句が広まったのはプロ野球が人気を得ていった昭和のころだ。「昭和100年」を迎えている「昭和の日」、阪神は昭和の警句をかみしめる敗戦を味わった。

 1―1同点で迎えた5回裏だった。下位打線7番からの打順、しかも先頭打者を取り1死。何事もなく終わるだろうと見る側も油断していた。

 才木浩人がここから3点を失うのだから野球は分からない。

 木下拓哉を1ボール―2ストライクと追い込みながら左前打された。

 問題は続く投手・涌井秀章だった。最初から送りバントの構えをしていた。ファウル、ボール(一、三塁手チャージ)、ボール、ファウルで2―2。バントもできそうになかった。ところがスリーバントの構えできた打者にボール、ボールで四球を与えてしまうのだ。

 一流の投手でもまれに見られる投手への四球である。四球が投手の失策ならば、投手への四球は致命傷になりかねない。実際、敗戦への坂道を転がり落ちた。2死後、板山祐太郎、上林誠知に長短打を浴びたのだ。

 後の結果から言えば、バントをさせていても無失点で切り抜けていた。

 なぜ、打てない投手に四球を与えるのか、といった問いは昔から繰り返されてきた。わずかな油断がフォームの乱れを生むのだろうか。明確な答えは見つかっていない。

 「勝つためにベストを尽くせたのか。バッテリーは考える必要がある」と監督・藤川球児は梅野隆太郎とのコンビに反省をうながした。「自分たちでリズムを崩せば、こういう結果になる」

 藤川は先の連勝中も「丁寧に戦っていきたい」と繰り返し手綱を締めていた。小さなほころびが大きな変調につながる。

 「犠牲バントの場合は確実にアウトをものにする」と年号で言えば昭和期に最強を誇ったオリオールズの投手が語っている。トマス・ボスウェルの『人生はワールド・シリーズ』(東京書籍)にある。「うちのチームは一つのアウトも軽視しないし、イチかバチかの勝負もしない」

 謙虚に粘り強く戦う。昭和の教訓はいまも生きている。 =敬称略=
 (編集委員)

続きを表示

「阪神」特集記事

「大谷翔平」特集記事

野球の2025年4月30日のニュース