“朗希2世”仙台育英の151キロ腕・山口廉王 8回2/3零封で東北撃破「ランクが一段上がった」

[ 2024年7月16日 05:00 ]

第106回全国高校野球選手権宮城大会3回戦   仙台育英2―0東北 ( 2024年7月15日    石巻市民 )

佐々木朗希のようなフォームで投げ込む山口(撮影・柳内 遼平)
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 頂点への視界が晴れた!昨夏の甲子園大会で準優勝した仙台育英(宮城)が15日、同じく優勝候補の東北に2―0で競り勝って3回戦を突破。最速151キロ右腕で左足を高く上げる豪快なフォームで「佐々木朗希2世」と称される山口廉王(れお)投手(3年)が今夏初登板で先発し、8回2/3を6安打無失点に抑えた。またまた東北に現れた怪物候補。伝説をつくるため、まずは聖地切符をつかむ。 

 宮城大会の歴史を激闘で彩ってきた仙台育英と東北。早すぎる3回戦での激突に、試合開始前から石巻市民球場前には異例の光景が広がった。入場を待つ人々の行列は実に約300メートル。仙台育英の先発・山口も「あの人数には驚いた」と目を見張った。

 今夏初登板。背番号1をつけるエースはプレーボール直後の先頭打者との対戦で、主役が誰であるかを分からせた。ドジャース・大谷と同じ1メートル93の長身右腕。ロッテ・佐々木のように豪快に左足を上げ、この日最速の148キロ直球で見逃し三振に斬った。収容1300人で満席となる内野席、開放された外野芝生席の観客が歓声を上げる。ネット裏に集結した9球団14人ものスカウトはスピードガンを握る力を強めた。

 初回に3度も148キロを計測した直球にカーブなどで緩急をつける。「初回から全力を出せた」と好感触で強敵相手にゼロを並べた。2―0で迎えた9回は2死一、二塁で降板。その後に満塁となるも、昨秋までエースだった右腕・佐々木広太郎(3年)が遊直に仕留め、熱戦に終止符を打った。

 あと1死で完封を逃すも8回2/3で128球を投じて6安打無失点。奪三振は5だったが、山口は「チームが勝つことが一番。広太郎が粘ってくれた」と仲間たちに感謝。優勝候補同士の決戦を制し「自分のランクが一段上がった」と胸を張った。

 今秋ドラフトの上位候補でもある右腕が、17人も140キロ超がいるチームでエースを担う理由を実証した。DeNAは萩原龍大チーム統括本部長が直々に足を運び「直球に威力があり、魅力を感じる」と評価。巨人も水野雄仁スカウト部長が視察した。それでも2年前の22年夏に東北勢初の甲子園大会優勝に導いた須江航監督は「まだまだこんなモノじゃない」と底抜けの才能に期待している。

 今春の選抜出場を逃したこともあり山口は「目標は下克上。一戦必勝を忘れず全力で戦いたい」と気を引き締める。昨夏に連覇を目指しながら慶応(神奈川)に決勝で敗れた聖地まで、あと3勝。今夏の主役は俺たちだ。(柳内 遼平)

 ◇山口 廉王(やまぐち・れお)2006年(平18)5月14日生まれ、東京都大田区出身の18歳。田柄二小1年から田柄ボーイズで野球を始め、高崎中では宮城北部リトルシニアに所属した。仙台育英では2年秋からベンチ入り。50メートル走6秒4、遠投100メートル。1メートル93、95キロ。右投げ右打ち。

 【記者フリートーク】降雨で約1時間遅れの午前9時56分に試合が開始。湿度89%と蒸し暑い中、山口は最後まで直球で押し切った。そんなスタミナには秘密がある。

 記者は6月、YouTubeの動画撮影で2日間、山口に密着。寮に入っていないため、練習後は母・由香利さん(41、写真)が運転する車で帰路に就く。2日間とも、車で走り去るところが撮影のラストシーンとなった。

 自宅までの約10分の車内は山口が母に悩みを語るなど貴重な時間で、さらに「勝負飯」をリクエストする場でもある。前夜、魚好きの山口は「サバ」をリクエスト。母が購入した5パックのしめさばをあっという間にたいらげたという。サバは貧血予防の「鉄」を含むなど栄養満点。東北打線を“サバいた”息子を一塁側内野席で見守った母は言った。「サバパワーです!」(アマチュア野球担当キャップ・柳内遼平)

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