今永昇太「カブス」入団 記者に「最も短い一日」をくれた左腕に感謝!

[ 2024年1月15日 08:00 ]

22年6月7日、ノーヒットノーランを達成して三浦監督と握手を交わす今永
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 22年6月7日、札幌ドーム。DeNAの先発は今永だった。記者は試合前に「7回くらいまで好投して3勝目はあるな」と予想。2月に左前腕を肉離れし、直前の2登板ではともに6回まで100球を投じて降板しており、完投のイメージはなかった。

 試合展開を中継でチェックしていた社内班から「今永のノーヒットノーランに備えます」と連絡がきたのは6回終了時。記者は「そうはうまくはいかないだろう」と踏んでいた。だが、試合開始から2時間32分。左腕エースは、ノーヒットノーランを達成。最後の打者・野村を右飛に抑え、マウンドを丁寧に足でならしてからベンチに向かう瞬間を、記者はスローモーションのように記憶している。

 球団担当の記者はナイターをじっと見ている訳にはいかない。早い段階で締め切りとなる「早版」用に、試合中に記事を書き始める。その日は今永の「ノーヒットノーラン」と「途中降板での3勝目」を想定し2つの記事を書き始めた。

 試合終了後の取材を終えて、さらに複数の締め切り時間がある「後版」用の記事作成がスタート。札幌ドームの取材エリアまでパソコンを手に持ち、取材エリアを走りまわった。今永の取材を待つ間も、座り込んでパソコンを叩き、各締め切り時間を目がけて記事を送信した。

 全ての作業を終えた後、社内にいる上司から電話が入った。「これ、試合終わってからおまえが書き続けたのか?」。「はい、そうです」。多数あった関連記事も含めて締め切りまでに出稿したことへの驚きと、ねぎらいの電話だった。プロ野球取材で初めて書いたノーヒットノーランの記事。だが、感慨に浸る余裕はなかった。とにかく記事を書き続けた、という思いしかなかった。ただ、今振り返ると、この時間をつくり出してくれた今永には感謝しかない。

 「ヘイ、シカゴ!」。今永はカブスの入団会見でファンに呼びかけた。こちらの気持ちはこうだ。「ヘイ、ショウタ!たくさんの記事を書かせてくれてありがとう」。アドレナリンが出続けた22年6月7日。あっという間に時間が過ぎていった記者人生で「最も短い一日」だった。
(記者コラム・大木 穂高)

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