【内田雅也の追球】若者も阪神も「誇り」ある道を行く 輝かしい未来にエールを

[ 2024年1月9日 08:00 ]

西宮市「二十歳のつどい」で能登半島地震の被災者に黙祷を捧げる参加者(8日、甲子園球場)
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 甲子園球場で開催された西宮市「二十歳のつどい」(旧成人式)であいさつした代表3人のうち、1人の女子大学生は学校に行けない時期があったそうだ。当時救われた「保健室の先生」になろうと看護学科に通う。「プライドを捨て、あなたらしく生きればいい」と励まされ、心が解けていったことがある。

 この「プライド」は虚栄心という意味なのだろう。自分を良く見せたいという自己顕示欲や見えか。この言葉で彼女は本当の自分を取り戻したようだ。取材中、思い出したのか、涙がこぼれた。

 成人の日恒例、2000年から続く作家・伊集院静氏(昨年11月24日永眠)による20歳の若者へのメッセージが今年も載った。サントリーの広告である。生前10月に書かれたものだという。

 <誇り>と題されていた。本当のプライドのことを言う。<誇りとは何か? それは信念をもって歩いていくことだ><自信を持ってその道を歩んで欲しい。そこには必ず生きる喜びがある。君の人生の肝心がある>。

 この<誇り>や<肝心>は同氏の作品でたびたび登場する言葉である。たとえば短編『2ポンドの贈りもの』=『駅までの道をおしえて』(講談社文庫)所収=では、アマ野球の老監督が生体肝移植手術を受ける執刀医に野球における「肝心なこと」を語る。

 「野球は勝者ばかりが何かを得るもんでもないんです。敗者にも得るものはあります」。チームメートや対戦相手…「その人たちに恥じないプレーをしろと。そのためには誇りをもってプレーしなくてはならないんです。敗れても誇りがあれば大丈夫です」。そして「野球にプロもアマチュアもありません。これが野球の誇りかもしれないと実感できる敗戦があるものです」

 当欄が追う阪神で思い出したのは昨年の日本シリーズ第3戦(甲子園)だ。4―5で敗れたが、岡田監督は「負けはしたが、あの試合でいけると思った」と語った。周囲に恥じない「誇り」ある敗戦を実感していた。

 そして日本一。優勝パレードを前に「勝ったという自分の誇り、1年間やってきたという誇りを持ってほしい」と話した。連覇に挑む今年は「選手に誇りが芽生えているはずだ」と期待する。
 若者も阪神も「誇り」ある道を行く。その未来にエールを送りたい。 (編集委員)

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