マイナーリーガー兼社長の西田陸浮 二足のわらじで奮闘中!米留学表明の麟太郎にもアドバイス

[ 2023年11月21日 04:30 ]

社長兼選手で奮闘する西田陸浮(本人提供)
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 ホワイトソックス傘下1Aカナポリス(ローA)の西田陸浮内野手(22)がスポニチ本紙の単独取材に応じた。今年7月に日本選手として10年ぶりに大リーグからドラフト指名され、現在は会社社長兼マイナーリーガーの二足のわらじで奮闘中。1年目の今季を振り返り、来季への決意を語るとともに、自身と同様に米国の大学へ留学することを表明した花巻東の佐々木麟太郎内野手(18)に助言とエールを送った。(取材・柳原 直之、杉浦大介通信員)

 プロ1年目のオフをカリフォルニア州で過ごす西田の朝は早い。日が昇る前の午前5時過ぎには起床。自主トレに向かう前に昨年8月に起業した「ワンハネ」社の社長として、リモートで日本企業やクライアントと打ち合わせに参加していた。

 「午前10時くらいには終わって、昼間は野球の練習。午後9時には寝ていますね」

 パドレス・ダルビッシュの母校でもある東北(宮城)を経て、米短大に留学。その後、全米大学体育協会(NCAA)1部の強豪オレゴン大に編入を果たした。プレーが評価され、今年7月のドラフトでホワイトソックスから11巡目指名を受けた。日本選手の指名は、13年のヤンキース2巡目指名の加藤豪(現日本ハム)以来、10年ぶりの快挙だった。

 「ワンハネ」の主な事業は野球留学や編入のサポート。選手兼社長の「二足のわらじ」には信念がある。

 「僕は全部自分で調べて米国にやって来て、凄くつらかった。でも実際にやってみて、留学は簡単やという思いがあった。僕より下の世代の選手の進路の幅を広げたい。お金もうけではなくて、彼らの力になりたい」

 今季は8月20日から、1Aカナポリスで俊足巧打の左の1番打者として二塁手兼外野手で19試合に出場し、打率・222、0本塁打、6打点、5盗塁。平均打球速度はプロ入り後に5マイル以上伸びて90マイル(約145キロ)超えに成長し、「芯を食ったら104マイル(約167キロ)ぐらいいく感じ」と手応えを深めた。

 「初めて打撃コーチがついた。体重を乗せる左足の動きや、下半身の連動を学んだ。来季の目標はハイA(ローAより1つ上の1Aチーム)に上がること。打率は3割は打って、盗塁もしないと。成功数より企図数。70回出塁すれば60回は走りたい。40~50は成功しないといけない」

 夢への旅路の途中、焦らず着実なステップアップを思い描いた。

 ◇西田 陸浮(にしだ・りくう)2001年(平13)5月6日生まれ、大阪府出身の22歳。宮城・東北では甲子園出場なし。卒業後に渡米し、マウントフッド短大に進学。ドラフト候補生が集まる22年夏のケープコッド・リーグで盗塁王を獲得するなど活躍。今年からオレゴン大に編入し、63試合に出場して打率.312、5本塁打、37打点。今夏の大リーグのドラフトでホワイトソックスに11巡目(全体329番目)で指名された。1メートル68、68キロ。右投げ左打ち。

 ≪米国に適応するため段階踏むべき…PAC12の4年制大学→SEC編入を≫気になるニュースが届いた。高校通算140本塁打の佐々木麟太郎が、米大学への留学を表明。進学先はまだ明らかになっていないが、西田には経験を基にした私案がある。

 「佐々木君の場合は、僕のように短大経由ではなく、PAC12(米西部の人気リーグ)の4年制大学に行って、そこからSEC(米南部の最激戦リーグ)に編入した方がいい。まず米国に適応しないといけないので、段階を踏んだ方がいい」

 異国で慣れない言葉、生活、食事など適応すべきものは多い。その助言は具体的だ。

 「英語は、とにかく遊んだ方がいい。ご飯に誘われたら行って、ビデオゲームに誘われたらやって。授業よりも、会話をした方がいい。長期休みには一時帰国する人が多いけど、帰らない方がいい」

 野球部員は2月ごろからシーズン60~70試合を戦い、その後サマーリーグ約30試合をこなす。半年間で約100試合を戦うプロ顔負けのスケジュールだ。

 「野球面で僕が言うことはないけど、試合に出続けることが大事。どれだけ出場できるかが、次の進路へのアピールで大事。1年目は60試合で打率.250、15本とか打てたら素晴らしいと思う」
 会社社長兼選手の異色のマイナーリーガー。夢のメジャーリーガーを目指し、後輩たちへの道しるべとなる。

 ≪“相棒”から刺激≫西田が昨夏参加した「サマーリーグ」で1、2番コンビを組んだのが、エンゼルスからドラフト1巡目(全体11番目)指名された一塁手シャヌエルだった。「僕が1番、ノーラン(シャヌエル)が2番。結構、仲は良かった」。8月18日のメジャーデビューから29試合連続出塁と躍動し、大谷らとプレーしたかつての相棒に「凄いなと思った」と刺激を受けていた。

 ≪過去4選手中 加藤豪のみデビュー≫大リーグのドラフトで指名された日本選手は西田で5人目。1号は02年にロッキーズから24巡目指名されたアリゾナウエスタン短大の外野手・坂本充。デザート短大の外野手・鷲谷修也は、08年に42巡目でナショナルズから指名されるも入団せず、翌年に再びナ軍から14巡目で指名され入団した。09年にはノーザン・アイオワ大の右腕・藤谷周平がパドレスから18巡目指名を受け、入団に至らず。10年にロッテから6位指名され入団した。過去4選手のうち、メジャーデビューしたのはブルージェイズ時代の22年の加藤豪のみ。

 ≪来月24日野球教室開催≫西田は「ワンハネ」のイベントとして、12月24日に横浜市内で「~西田陸浮プロジェクト第1弾!~ トライアウト・野球教室」を開催する。西田の他に元オリックスなどの川越英隆氏、元ロッテなどの大嶺祐太氏も参加する。今回は中学生の投手が対象で、西田は「野球教室と野球留学の説明会というイメージ。冬場なので投手限定。投手の方が野球留学に行きやすいということもある」と説明した。

 ▽米大学野球 全米大学体育協会(NCAA)1部の各校が31のリーグに分けられ、2月から5月までシーズン60~70試合程度を戦う。各リーグ優勝校と選抜校の計64校で全米王者を決めるトーナメント戦が開催され、今年はルイジアナ州立大(LSU)が優勝。そのLSUが所属する「SEC」が最激戦区で、西田がプレーしたオレゴン大の「PAC12」もレベルが高い。シーズン後に開催される「サマーリーグ」もメジャー球団へのアピール期間。

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