有藤通世氏と中村武志氏が振り返る セ史上初の2年連続交流戦勝ち越し

[ 2022年6月13日 05:30 ]

有藤通世氏(左)と中村武志氏
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 「日本生命セ・パ交流戦」は12日、全日程が終了し、セ・リーグが55勝53敗で2年連続3度目の勝ち越しを決めた。セの2年連続勝ち越しは05年の交流戦導入後、初めて。ヤクルトがセ球団初となる全6チームに勝ち越す「完全優勝」を飾るなど、パの絶対的優位と言われてきた状況はどう変わったのか。スポニチ本紙評論家の有藤通世氏(75)と中村武志氏(55)が108試合の激闘を振り返る。

 ≪有藤通世氏 力対力で対抗できる打者出た≫今年の交流戦で、ヤクルト・村上はソフトバンク・千賀の157キロの直球を逆方向へ本塁打した。巨人・岡本和、DeNA・牧は、パの球団相手に被本塁打0だったロッテ・佐々木朗から一発。パワーを前面に押し出すパの投手に対し、力対力の勝負で対抗できる打者が次々と出てきた。それがセが互角以上に戦えるようになった要因の一つだと思う。

 一時期さかんに言われた「パ・リーグとセ・リーグの実力差」は確実になくなってきていると思う。

 一つは17年から4年連続日本一と絶対的な強さを誇ったソフトバンクの力がやや落ちてきたこと。パの他の5球団、そしてセの6球団はソフトバンクの強さを分析し、追い付け追い越せを目標にチームをつくり始めた。私の現役時代、V9の巨人を目標にしたのと同じだ。

 大きく変わったのが昨季の日本一で、今年の交流戦も制したヤクルト。かつてのソフトバンクのように盤石のリリーフ陣をそろえ、彼らをフル活用して接戦をものにしている。元々、セの投手はパに比べて制球がいいと言われた。交流戦で不振だったソフトバンク・柳田などボール球を振らされていた。今季は「投高打低」と言われる中で、セの投手陣が巧みにパの打者を抑え込んでいた印象だ。

 ≪中村武志氏 「投高打低」新テーマの対応が鍵≫セ・リーグが2年連続勝ち越したが、まだパ・リーグの方が7対3くらいで力が上と見ている。投手力は先発、救援陣も含めて互角になってきたが、打線に関してはパがまだ上という理由からだ。セも村上や岡本和、牧、佐藤輝ら長打力を兼ね備えた打者が成長している。一方で、パはソフトバンクや西武の打力が落ちている。ただし、バッター一人一人の能力を見ると総合的には差を感じる。

 セとパの格差以上に、顕著なのが今季3人のノーヒッターが出ていることが示す、球界全体の「投高打低」だ。今や150キロが当たり前で、投手のスピードアップは凄い。トラックマンなどによる球の回転数や回転軸、変化量などデータを生かしたトレーニング方法の進化はもちろん、メジャーのようにマウンドが硬くなっていることも一因だろう。

 打者もスイングスピード、打球速度や角度などの分析により、レベルアップはしている。しかし、あくまで受け身だ。スイングデータも大事だが、タイミングの取り方などバットに当てる技術を磨くことが先決だろう。

 投手の進化もあり、各球団の外国人打者も目立った成績を上げられていない。セとパの格差は着実に縮まっているが、セ、パ問わずに「投高打低」という新たなテーマへの対応が今後の課題となる。

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2022年6月13日のニュース