【内田雅也の追球】テキサス安打防ぎ守り勝った阪神 かつての守備の名手・新庄監督からも刺激得た

[ 2022年6月6日 08:00 ]

交流戦   阪神8ー3日本ハム ( 2022年6月5日    甲子園 )

<神・日>8回1死、万波の打球を好捕する島田(撮影・北條 貴史)
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 内外野の野手の間に落ちる安打をテキサス安打という。元は米俗語でテキサスリーガーズ・ヒット、単にテキサスリーガーと呼ぶ。

 1889年、マイナーリーグ・トレドの左打者アーサー・サンデーがこの手の安打を量産し、3割8分9厘の高打率をあげた。出身が今の2A級テキサスリーグだったため語源となった。

 あくまで個人的な採点だが、阪神はこの日、テキサス安打4本を外野手の好守で防いだ。

 大きかったのは8回表である。4―3とリードは1点。1死から左前ライナー性飛球を島田海吏が飛び込んで好捕した。外角球をバットの先でとらえた打球で、難しい判断だった。先発は右翼で7回表から左翼に回ったが見事に対応していた。

 2死後、失策の走者が一塁に出た。長打警戒で外野手は深く守備位置をとった。走者二盗で2死二塁となると、単打警戒で今度は前進守備を敷いた。直後、ライナー性飛球が中前に舞ったが、近本光司の位置取りがドンピシャで、難なく捕球、事なきを得た。

 他の2本は2回表先頭、左翼線寄りライナーを好捕したメル・ロハスと最後の9回表2死、左中間寄りライナーを好捕した小野寺暖である。

 他にも4回表と8回表、ともに先頭打者の三遊間寄りゴロをさばいた中野拓夢の好守もあった。阪神は守り勝ったのだ。

 今回の3連戦3連勝を通じても言える。スコアをつける際、テキサス安打には「T」の文字を添えている。4日、阪神に「T」付き安打が2本ある。またこの日8回裏2死満塁、走者一掃となった右中間ライナーも万波中正があと一歩だった。

 日本ハム監督・新庄剛志は現役時代、幾度も安打性打球を美技で好捕していた。点差、状況はもちろん、投球のコース、球種、打者の反応などで位置取りや一歩目の好判断が光っていた。新庄は「あと少し」の悔しさと課題、そして希望を見た3連敗ではなかったか。

 3連勝した阪神も、新庄の前向きで明るい姿勢に刺激を受け、原点にかえった。BIGBOSSと、その子分たちはさわやかだった。個人的にも懐かしく、楽しめた。

 野球を愛した俳人・正岡子規の句にある。<六月を奇麗な風の吹くことよ>。小雨降るなか、心地よい風を感じた。 =敬称略= (編集委員)

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