日本ハム・新庄監督の“おわび” 敵地の少年にノックバットをプレゼントしたわけ

[ 2022年6月6日 08:00 ]

新庄監督からプレゼントされたノックバットを手に笑顔の的場凛太郎くん
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 目前に3年ぶりの“光景”が広がった。5月31日からの広島―日本ハムの3連戦、マツダスタジアムには連日2万人超のファンが足を運んだ。試合前練習ではネット越しに少年たちが、思い思いの選手に声をかける。「ボールくださーい」「サインくださーい」。コロナ禍では全く見られなかった光景に、自然と頬が緩んだ。

 31日の試合前に行われた新庄監督の囲み取材中には、隣のフィールドシートから一生懸命声を出していた少年がいた。「ボールくださーい」。その声に反応したボスに少しの間が空いた。ただ、ボールは手元にない。すると、立ち上がった指揮官は「これ、あげるよ」と、持っていた自身の特注ノックバットを差し出したのだ。

 敵地で行った神対応に感銘を受けたが、このシーンには伏線があった。グラウンドコンディション確認のため、囲み取材を中座した指揮官は、その少年にサインを求められていたのだ。だが、現役引退後はサインを一切書かないことを貫いており「サイン無いの、ごめん!」と謝っていた。

 囲み取材に戻ってきた指揮官に、再び少年が「ビッグボスさ~ん!」と声を掛け、指揮官は「ビッグボスさん、“さん”いらない!“さん”いらんよ。来年、(愛称を)何にしようかな…」と苦笑いしていた。そんな掛け合いがあり、サインを書けなかったおわびにつながっていた。

 その翌日からだ。今川、北山、アルカンタラら選手も声をかけられると、適正な距離から柵越しなどでボールをプレゼントするシーンが増えた。今年1月の12球団監督会議で「11球団の球場を満員にしたいというのが僕の目標。やっぱり、人生と野球は人を楽しませるものだと僕は思う」と話していた指揮官。少年たちが笑顔で帰っていく姿に、ファンあってのプロ野球を改めて実感した。(記者コラム・清藤 駿太)

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