番長おめでとう 高田商1年の秋、顔面ぶん殴って連れ戻した“同期”の思い

[ 2021年4月5日 05:30 ]

セ・リーグ   DeNA3-1広島 ( 2021年4月4日    横浜 )

高田商同期、青山コーチ(当時)からのメッセージ
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 開幕から9試合目。DeNA・三浦監督の記念すべき初勝利を奈良・高田商野球部時代の同僚たちも祝福した。バッテリーを組んでいた生駒基樹氏(47=現静岡・島田樟誠高野球部監督)は鉄拳を浴びせ、野球部に連れ戻した思い出を披露。番長は今でも仲間たちと強い絆で結ばれている。

 高校1年の秋だった。三浦監督にとって一生忘れられない出来事がある。周囲を見ればバイクに乗る友人やバンドを組む友人たち。輝いて見えた。「みんなが楽しんでいるのに俺はランニングか…」。学校をサボり、練習にも顔を出さなくなった。学業、野球からも目をそむけ、ついに高校からも心が離れた。

 ある日、三浦監督がふらっとグラウンドに現れた。「学校、やめるわ、以上や」。それだけ言って立ち去ろうとした。背中を追ったのが同学年で捕手でもあった生駒氏。呼び止め、鉄拳を見舞った。

 「顔面をぶん殴ったんです。“おまえから野球を取ったら何が残る!”と言って。大切な仲間。もし甲子園に行けたとしても、大輔がいない甲子園なんて意味がなかったので」

 その拳は「怒り」ではない。友への「思い」が込められていた。すぐに三浦監督も、それが分かった。「真剣に自分のことを考えてくれる仲間がいる…」。退学を思いとどまり、野球に専念した。

 同学年は7人(マネジャー2人)。人数は少なかったが、絆は強かった。生駒氏は「大輔が私立の強豪校の部員なら誰も止めなかったでしょう。中退してロックバンドを組んでいたと思う」と笑う。

 一発の熱いパンチで野球に引き戻された球児は、その後にプロで通算172勝を挙げる大投手となり、今年からDeNAの1軍監督となった。仲間への感謝の思いは、30年たった今も変わらない。(大木 穂高)

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