広島・中村恭の先発直訴から見る救援陣の憧れと不安 勤続疲労と隣り合わせの将来設計とは

[ 2021年2月4日 09:00 ]

広島・中村恭
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 かつての役割に未練を残す投手は、どれほどいるのだろうか。広島・中村恭が先発転向を直訴した。「元々、先発として結果が出なかった。年齢(31歳)も考えて挑戦するなら今がいいと思った」。救援に本格転向した19年に自己最多の43試合に登板。現在の立ち位置を手放すまでに、先発への憧れが勝った。

 現在の救援陣は、先発もこなせる投手が大半を占める。救援を専門とする中崎、今村、一岡は、いずれも春季キャンプ2軍スタート。本調子から遠ざかるのは、勤続疲労と無関係ではないだろう。避けられない負担を考えれば、救援陣が「先発への憧れ」を抱いていても不思議ではない。

 そんな疑問に、菊池保は迷わず首を振る。「契約してもらった1年をどう全うするか。何年も先の疲労のことまでは気にしていないですね」。楽天時代は、チーム状況に応じて先発、救援ともにこなす立場で、15年の18試合登板が自己最多だった。広島にトレード移籍した19年から救援一本。19年58試合、20年44試合と2年連続で1軍で完走したように、救援適性があった。

 「楽天の最後の年ぐらいから1回だけの方が球が良くて、中継ぎが合っているのかな…とは思っていた。(楽天時代から)1軍で投げるためならどこでも…という目標は、いまも変わっていない」

 若手は、将来設計をどのように思い描いているのだろうか。1軍で先発経験もあり、昨季52試合登板した塹江は、今季高卒7年目、2月で24歳を迎える。「中継ぎは直球ともう1つ球種があれば勝負できる。先発だと4球種はほしい。僕がいま先発に…となれば技術的に厳しいかなと思う」。150キロ超の直球とスライダーで勝負できる特徴は、救援左腕として花開く条件がそろっていたと言える。

 勤続疲労の指摘には、うなずける部分があると言う。「先発の方が楽ということは全くない。その前提の中で、中継ぎの負担は試合数とか目に見えて分かるので、選手生命を伸ばすには、先発の方がいいという考え方があるのは分かる」。今後も救援起用が続けば、蓄積していく疲労と戦う覚悟はできている。

 大学時代から主に救援を務め、1軍で先発経験のないケムナでも「一から試合をつくっていくのは、かっこいいですよね」と憧れはある。志願する者も、希望を秘めたままの者もいる。いずれにせよ、投手生命を懸けて完全燃焼できる場所を探し求めている。(記者コラム・河合 洋介)

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2021年2月4日のニュース