米球界挑戦の小原へのメッセージ “心に突き刺さった”菊池と大谷のアドバイスとは

[ 2020年2月3日 09:00 ]

米球界挑戦中の小原大樹
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 マリナーズ・菊池雄星、エンゼルス・大谷翔平。ともに岩手・花巻東が生み出したメジャーリーガーだが、性格やタイプは大きく違うと感じている読者の方は多いだろう。ただ、揺るぎない信念、覚悟や野球に対する真摯(し)な姿勢は同じで、コメントの節々にもそれが表れる。類いまれな才能だけにとどまらない、菊池と大谷の言葉の力。それを菊池の3学年後輩で、大谷の同期生でもある小原大樹が教えてくれたので紹介したい。

 小原は花巻東時代に大谷の2番手投手だった。慶大を経て、日本製紙石巻に入社したが昨年いっぱいで退社。米球界挑戦を決め、現在は米アリゾナ州を拠点にトレーニングに励み、メジャー複数球団のテストに向けて汗を流している。この大きな決断を下すにあたり、小原は事前に菊池、そして大谷の順に相談しているが、この時のやり取りが非常に興味深い。

 「高校の監督(佐々木洋氏)を通じて雄星さんに連絡がいっていました。雄星さんに“米国に挑戦しようと思っています。ボール、マウンド、相手打者、環境などをお聞きしたい”とお伝えすると、“その話は聞いてました。どこかで会って話をしましょう”とすぐに連絡が返ってきました。昨年10月に都内でお会いして、さまざまなアドバイスをもらい、“勇気ある挑戦を少しでも、できる範囲でバックアップさせてほしい”とありがたいお言葉をいただきました。その言葉のお陰でモノクロだった挑戦が少しずつ色づいたというか、カラーになりました。そこで僕は翔平に連絡しました」

 小原はLINEで大谷に「アメリカ行くわ(笑)」と送った。すると「何をしに?(笑)」とすぐに返事が返ってきた。最初は大谷も半信半疑だったという。だが、小原の熱意、本気度を感じるとLINEのやり取りは徐々に熱を帯びていった。小原は言う。「僕はすぐ計算してしまう。僕クラスの投手が打者・大谷にどういう風に見えるか。“これくらいの球速が出て、こういう投球しているんだけど、どう?”と伝えました」。すると、また大谷からすぐ返事があった。「そもそも通用するかしないか、需要があるか、ないかじゃない。自分自身のスタイルを需要にできるように頑張るんじゃないの?結果が出れば、それが需要として必要とされる。需要かどうかじゃなくて、需要になるようにするべきだと思う」。高校時代にともに汗を流した仲間からのメッセージは小原の心に深く突き刺さった。

 「同期だからこそ強く言われているように感じるんですけど、だからこそ変に飾らず、本音で接してくれている気がしました。雄星さんと違って、翔平は先入観を持たずにトライして得たことを実体験として取り入れるタイプ。やるのは自分なので、自分自身の実体験こそが本当の価値、感覚だという考えです。できることも先入観によって不可能になってしまいます。“先入観にとらわれないで、自分自身がこれどうかな、と試行錯誤を繰り返してその場、その場でやっていく方が絶対、プラスになると思うから”とも言われました」

 「“(米国の)ボールは滑るの?”とも聞いたんですけど、“それも全部自分で感じた方がいい。もしかしたら、俺は滑るけど、お前は滑らないかもしれない。手の湿度とかも人によって違う。感覚自体も本当に自分でやってみなきゃ分からないところだから。俺から聞いたからどうとか、そういうのはやめた方がいい”と返事が返ってきました」

 元々、小原の米球界挑戦プランは花巻東・佐々木洋監督に相談したところから始まっている。国内独立リーグ挑戦を視野に入れ、退社を報告した際に「会社を辞めるリスクを背負えるなら、今後の経験にもなるし、米国に挑戦したらどうか」と提案を受けたという。「米国という選択肢はそれまでなかった。視野が一気に広がった」と考え抜いた末、渡米を決断。1月は菊池の米アリゾナ自主トレに同行した。

 「たくさん自分の経験を教えてくださる雄星さんと、自分自身の経験を信じろという翔平がいる。どちらの意見も凄く勉強になる。僕はその両方を吸収させてもらって、自分はこう感じるという発想になれる。世界のトップクラスで活躍する先輩、そして同級生が身近にいる僕だからこそ得ることができる価値観、考え方。本当に恵まれているなと凄く感じました」

 菊池と大谷。小原が言う通り、どちらの考えも正しく、良い悪いはないだろう。ただ、冒頭でも記した通り、揺るぎない信念、覚悟、野球に真摯に向き合う姿勢は同じだと断言できる。2020年、菊池は飛躍を目指しメジャー2年目に、大谷は2年ぶりの二刀流復活を目指しメジャー3年目に向かう。プレーはもちろん、2人の発言、その裏にある思いにも注目していきたい。(記者コラム・柳原 直之)

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