西武・牧田 超遅球84キロカーブ WBC球副産物で10キロ以上遅く

[ 2017年2月13日 10:15 ]

シート打撃の打撃投手を務める牧田
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 スーパーサブマリンに魔球。3月開催の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向け、西武・牧田和久投手(32)が超遅球を手に入れた。侍ジャパンのブルペン陣を支えるサブマリンは12日、宮崎・南郷の春季キャンプで初のシート打撃に登板。WBC公式球を使用すると、カーブはシーズン中より10キロ以上遅い84キロを計測した。WBCを欠場する日本ハム・大谷翔平投手(22)は最速165キロを誇るが、約半分の球速で世界の強打者に立ち向かう。

 スローモーションのような超遅球だった。1ボール1ストライクから設定されたシート打撃。牧田は7人目の中田に対しシンカー、スライダーを使ってから外角低めのカーブを投じた。中田は待ちきれず、二ゴロに倒れた。西武スコアラーがバックネット裏で計測したスピードガンは84キロ。シーズン中のカーブは90キロ台だけに誰もが驚いた。

 「(意図的に)遅くしているわけじゃない。いつも通りの感覚で投げた」。牧田も首をかしげるほどの超遅球はNPB球よりも縫い目の幅が広く重さもバラつきがあるといわれるWBC球によって生み出された。

 いつもより曲がりが大きく、シート打撃は打者12人と対戦して5安打。カーブも8球中5球がボール球だった。「球がつるつるする。NPB球のイメージ で投げるのでなく、その球に合わせないと」と試行錯誤するが、精度を上げれば誰にもマネできない武器となる。

 「侍対決」となった秋山も91キロのカーブで中飛に仕留めた。土肥投手コーチは「まだフォームのバランスが良くないけど、マキ(牧田)は順応力が高い。全然大丈夫」と心配無用を強調した。

 最速165キロを誇る大谷は右足首痛でWBC不参加となったが、剛速球だけが投手の生きる道ではない。尊敬する同じサブマリンの渡辺俊(元ロッテ、現新日鉄住金かずさマジック)も80〜90キロ台のカーブを駆使し06、09年WBCで先発、中継ぎとして連覇に貢献。超遅球には希少価値がある。

 「映像でなく体感ですよね。相手(打者)にどう映るか。やってみないと分からない。それが一発勝負の怖さ」と牧田は慎重だが、世界大会で80キロ台の遅球を操れる投手は皆無に等しい。侍 ジャパン・小久保監督からも「困ったときの牧田みたいな、フル回転のイメージ」と期待されている。

 「初実戦でいろんな課題が見つかった。打たれている球、抑えている球ははっきりしている。しっかり修正したい」。13年WBCではクローザーを任されたが準決勝で敗退した。悲願の世界一奪回へ、サブマリンは遅球に磨きをかける。 (平尾 類)

 ≪過去の遅球≫

 ☆渡辺俊介(元ロッテ)牧田と同じアンダースローで、カーブは80〜90キロ台。下半身の柔軟性を駆使し「最後まで直球だと“だます”ことができるかが勝負」

 ☆渡辺省三(元阪神)50年代に「省やんボール」というスローナックルカーブで周囲を驚かせた。自称50キロ前後。

 ☆小川健太郎(元中日)69年、苦手の巨人・王貞治対策に腰の後ろに腕を通す背面投法を披露。球速は50キロ以下といわれる。

 ☆星野伸之(元オリックス)スローカーブは時に80キロ台後半。捕手の中嶋聡が素手でキャッチしたことは有名。

 ☆小宮山悟(元ロッテ)球を人さし指と中指で挟み、押し出すように投げる85キロ前後の「シェイク」を開発。

 ☆多田野数人(元日本ハム)超スローボール「ただのボール」はスピードガンでは計測不能。テレビ局の企画では40キロ台と計測された。

 ☆西嶋亮太(東海大四)14年夏の甲子園。九州国際大付戦で計測不能の超スローカーブを投じて話題に。一部で「投球術ではない」と指摘される一方で、レンジャーズ・ダルビッシュがツイッターで擁護。

 ☆不知火守 水島新司氏の人気野球漫画「ドカベン」などに登場。神奈川・白新高校のエースとして「ハエが止まる」とされた超遅球が武器に活躍。

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