黒田 セ5球団偵察隊うならせた 「動く」球で若鯉を貫禄料理

[ 2015年2月26日 05:30 ]

復帰後初めてフリー打撃に登板した黒田は貫禄の投球

 広島の黒田博樹投手(40)が25日、沖縄市での2次キャンプで初めてフリー打撃に登板した。ドラフト1位の野間峻祥外野手(22=中部学院大)、3年目の鈴木誠也内野手(20)と左右の若手有望株に対して計35球。メジャー仕込みのツーシームやカットボールなど「動く」球で翻弄(ほんろう)し、安打性の当たりを2本に抑えた。日米通算182勝右腕の投球は、集結したセ・リーグ5球団の偵察隊をうならせた。

 ケージに乗りかかるようにして黒田の投球を見守っていた緒方監督が思わず、驚きの声を上げた。「あれだけ球が動くのかと。しかもコントロールもいい。打者はとらえるのが難しい」。現役時代、指揮官の目に焼き付いているのは最速157キロの速球やシュートなどでグイグイ押し込んでいた黒田の姿。そのイメージが完全に打ち消された。別人のような投球スタイルで35球を投じた40歳は「最初にしてはまずまず。少しステップアップした」と充実の表情を浮かべた。

 打者への本格的な投球はジーター(ヤンキース)の引退試合で先発を務めた昨年9月25日(日本時間26日)以来。対戦打者には売り出し中のドラフト1位ルーキー野間と、3年目の鈴木誠、左右1人ずつが指名された。この日はスプリット以外の持ち球全てを試したが、最も多く投げたのはツーシーム13球、カットボールも12球だった。テーマは「動く」。7年間のメジャー生活で打者のタイミングを外す「ツーシーム」などを習得した。芯に当てられた打球は2本。時に先端側へ、時に根元側へ。バットの中心を外れた力ない打球が転がり、そして上がった。黒田は「そこまで状態は上がっているとは思っていないしこの時期に自分で評価するのは難しい。課題はたくさんある」と淡々と振り返るが、捕手役を務めた会沢は「ツーシームはいろんな曲がり方をする。打者は絞りづらい」と分析。開幕カードで対戦するヤクルトの衣川篤史スコアラーは「思った以上に球が動く。ツーシームは曲がりが遅い」と必死にペンを走らせた。

 黒田がフリー打撃の登板を終えると、スタンドのいたるところから拍手が湧き起こった。練習試合でも、オープン戦でもない。男・黒田が導いた異例の光景だった。決して満足のいく内容ではなかったが畝(うね)投手コーチが「たとえフリー打撃でも一球も無駄な球を投げない」と語るように復帰会見で強調した「いつ最後の一球になってもいい」の心構えは貫いた。今キャンプ中の実戦登板はなく、28日にシート打撃登板を予定。推定で年俸20億円前後と言われるメジャーのオファーを断り、古巣を選んだ黒田の男気。その思いに心を動かされたファンの期待に応えるべく、全力投球を誓った。

 ▼野間 しっかり(コースに)投げ分けられていた。球も少し動いていたので、捉えることができませんでした。

 ▼鈴木誠 動くボールが凄かった。ツーシームだと思いますが、真っすぐが動いている感じ。打ちづらかったです。

 ▼巨人・森中聖雄スコアラー 手元で動く。いいものを見せてもらった。

 ▼阪神・古里泰隆スコアラー 外から入れたり、内から落としたり。やっかい。

 ▼中日・善村一仁スコアラー 8年前と比べず、新しいイメージで考える。

 

続きを表示

この記事のフォト

2015年2月26日のニュース