中畑監督「胸が痛む」…津波で崩壊した球場を復興のシンボルに

[ 2012年1月23日 06:00 ]

津波で壊れた堤防によじ登るDeNA・中畑監督

 崩壊した球場を復興のシンボルに――。DeNAの中畑清監督(58)が22日、福島県南相馬市のみちのく鹿島球場を訪れた。11年ぶりに足を運んだ懐かしの球場は津波にのまれ、震災から10カ月たった今も修復のメドが立っていない。中畑監督は元気に野球ができる環境づくりが復興の起爆剤になると訴え、震災直後から精力的に行ってきた被災地訪問をひとまず締めくくった。

 白い雪に隠れてはいるが、グラウンドは海の砂や田んぼの泥に覆われている。正面玄関のガラスは割れ、三塁側フェンスはひん曲がったまま。01年9月30日のこけら落とし、イースタン巨人―湘南(現DeNA)戦以来11年ぶりに訪れるみちのく鹿島球場は無残なまでに姿を変えていた。

 「いい球場だったんだけどなあ。胸が痛む。悔しいよ」

 昨年3月11日。烏崎海岸の堤防を破壊した津波は海岸から約2キロ離れ、避難場所になっていた球場を襲った。グラウンドに逃げた住民は何人ものみ込まれた。「皆さんもご一緒に」と報道陣にも呼びかけて黙とうをささげた中畑監督。「この球場を復興のシンボルにしてもらいたい」と訴えた。

 何度も足を運んで目にしてきた被災地の現実。野球場はがれき置き場になるか、仮設住宅が建つか。「野球はみんなを元気にするパワーを持っている。思い切り野球ができる環境が欲しい」。震災から10カ月たっても全く手つかずの鹿島球場。修復して復興のきっかけにしてほしいという。

 球場を後にして海岸に向かった中畑監督。破壊された堤防の割れ目を抜けて砂浜に出た。太平洋は大シケ。ゴー、ゴーとうなりを上げていた。

 「自然のパワー、凄いな。怖いよ。きょうは海が怒っている。復興への道筋が見えてこないことに怒ってるのかな。何かパワーをもらったような気がする」

 けじめとしてキャンプイン前にどうしても足を運びたかった南相馬。スピード感のない行政にいら立ちを覚えながら、4年連続最下位に沈むチームの再建に立ち向かう気持ちを新たにした。

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2012年1月23日のニュース