素根輝 強敵完封!初出場で頂点!阿武、塚田に続き女子3人目3冠達成

[ 2021年7月31日 05:30 ]

東京五輪第8日 柔道女子78キロ級 ( 2021年7月30日    日本武道館 )

女子78キロ超級決勝、終始攻め続け金メダルを獲得した素根輝(左)(撮影・小海途 良幹)
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 女子78キロ超級決勝の素根輝(あきら、21=パーク24、日大)が4大会連続出場のイダリス・オルティス(31=キューバ)を相手指導3による一本勝ちで下し、初出場で金メダルを獲得した。これで今大会の柔道日本勢の金メダルは9個目で、8個だった04年アテネ大会を上回る最多記録となった。また、日本の今大会金メダル獲得数は16個目となり、直後のフェンシング男子エペ団体で17個目。64年東京、04年アテネの16個を超えて、大会第8日にして早くも史上最多となった。

 女子最重量級に、身長1メートル62の小さな女王が誕生した。決勝は過去3大会で銅、金、銀と連続してメダルを獲得しているオルティス。身長にして約10センチ、体のボリュームも二回りほど上回る相手を破り、「凄く特別。いろんなことが詰まっている」という金メダルを獲得。一礼後、歩み寄って“レジェンド”に抱きとめられると、万感の涙があふれ出た。

 「信じられない気持ちだった。言葉にできないくらいきつい稽古をしてきたが、そこで土台ができた。頑張ってきて良かった」

 オルティスとは19年世界選手権でも破るなど過去3勝1敗だったが、ピークを合わせてきた相手の圧力は、過去4戦と全く違った。それでも戦術は変わらない。左の釣り手で相手の右釣り手を殺して技だしを封じ、前への圧力や得意の担ぎ技で徐々に体力を削った。延長4分52秒、相手に3つ目の指導が行って決着。投げられなかったものの完勝と言える内容に、「とにかく最初の組み手を大事に戦った」と話した。

 常に胸にあるのは、厳しい指導を受けてきた父・行雄さんから授けられた「3倍努力」の言葉。稽古やトレーニング量は人の3倍。中高時代は学校での部活を終えて帰宅後、自宅の一室を改装したトレーニングルームにこもった。自身も柔道をしていた行雄さんは最軽量級、母・美香さんも身長1メートル50台。我が子も大きくはならないと見込んだ父の教えを忠実に守り、「小さくても自分自身で努力すれば、必ず勝てるんだよと証明したかった」と胸を張った。

 高校柔道界では伝説となっている高2で迎えた17年7月の団体戦で行われる金鷲旗大会。大将としての責任を背負った素根は、周囲があきれるほどの猛稽古を敢行した。クーラーのない真夏の道場。脱水症状気味になって何度も倒れ、そのたびに全身を氷で冷やした。南筑高の松尾浩一顧問はストップを掛けたが聞かず、「何人残っていても、私が全部勝ち抜いて優勝します」と宣言。決勝では阿部詩擁する夙川学院を5人抜きして初優勝。「3倍努力」の正しさを証明したことが、この日の金メダルにつながった。

 前日のウルフ・アロンと同様、体重無差別で争われる皇后杯、世界選手権に続いて五輪を制し、阿武教子、塚田真希に続く女子3人目の3冠を達成した。21歳の“小さな大器”には一時代を築く予感が漂うが、「まずはしっかり、もう一つ獲れるように戦いたい」。31日の男女混合団体戦で、2個目の“輝き”を手に入れる。(阿部 令)

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