【柔道】ウルフ、相手の疲弊待ち投げる完璧な試合運び―上水研一朗の目

[ 2021年7月30日 05:30 ]

東京五輪第7日 柔道男子100キロ級決勝 ( 2021年7月29日    日本武道館 )

柔道男子100キロ級決勝、大内刈りで攻めるウルフ・アロン(左)(撮影・北條 貴史)
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 この日の朝の電話でウルフは「膝にちょっと不安がある」と吐露していたが、10キロ近い減量はかなりうまくいったようで、初戦から動きも良く、最近では最高の試合ぶりだった。

 テーマは3つあった。(1)荒々しさ(2)技の最終局面の極(き)め(3)我慢。全てウルフの特長だ。左組のウルフは左釣り手で相手を制御し“遠近両用”の柔道を披露してくれた。釣り手で前襟を持てば相手と距離を保った状態で、背中を持てば懐に入り込んで接近戦でと、荒々しく攻め込み、相手を疲弊させた。準決勝、決勝はともにけんか四つの相手釣り手を左でコントロールしながら、流れをつかんでも我慢し機会を待った。そして相手が疲れたところで右の引き手をしっかり引き、最後まで「極め」を効かせて投げ技でポイントを奪う、完璧な試合運びだった。

 精神的な強さも光っていた。「趙グハムは苦手」と公言していたが、ウルフが名前を挙げるということは、完全にターゲットとして絞ったという合図。相手の一本背負いは完全に見切っており、決勝では危ないシーンがなかった。狼に狙われると怖い、ということを世界に知らしめた、素晴らしい勝利だったと思う。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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2021年7月30日のニュース