ウルフ 金の原点は「大内刈り習得」「左組みへ変更」

[ 2021年7月30日 05:30 ]

東京五輪第7日 柔道男子100キロ級決勝 ( 2021年7月29日    日本武道館 )

柔道男子100キロ級で金メダルを獲得し、鈴木桂治コーチ(左)と抱き合って涙のウルフ・アロン(撮影・北條 貴史)
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 ウルフが柔道を始めたのが「柔道の父」嘉納治五郎師範が創設した講道館(東京都文京区)を拠点に活動する春日クラブ。その総本山で培った2つの技術が、金メダルへとつながる原点となった。決勝で一本を奪うなど、今も得意技の一つとする大内刈りだ。ウルフのほか、16年リオ五輪男子90キロ級金メダリストのベイカー茉秋らも指導した向井幹博氏(59)は「ベイカーもリオの決勝で使った。なぜ彼らが得意かと考えると、教え方を工夫したから印象に残ったのかなと思う」と振り返る。

 柔道は「甲冑(かっちゅう)を着て、戦場で相手を倒す手段」(向井氏)だった柔術が源流となっていることから、講道館では伝統的に足技を中心に指導する。ただ、教科書に書いてあるような言葉遣いで教えても印象に残らない。「1、2、3」の掛け声を「“いやん、ばかん、うふん”」など、子供の気を引く言葉に変換。世界を制する技へと昇華させた原点には、ウルフ少年の心をつかんだ指導法があった。

 そしてもう一つは、小4の時に組み手を右から左へと変更させたことだ。当初は右組みだったが、試合では左回転の技を掛ける場面が目立ったという。そこで組み手と足や体の回転の関係性に関する学術論文を参考に、左組みへの変更を助言。素直に受け入れたという。一度体に染みついた組み手を変えることは至難の業。「苦労したと思う。よほどの覚悟がいる」と向井氏。それでもじっくりと時間をかけ、身体的な特長を生かし切れる組み手を自分のものにしていった。

 ≪母「よく頑張った。それだけです」≫ウルフの父ジェームスさんと母・美香子さんは自宅でテレビ観戦。電話取材に応じた美香子さんは「よく頑張った。それだけです」と話し、愛息を支えてくれた人に「いい仲間に恵まれた」と感謝した。トップレベルの選手になった当時、「(五輪年以外に毎年開催される)世界選手権で勝てれば良くない?」と話したところ、「4年に1度、ピークを合わせられるのが本物なんだ」と反論されたという美香子さん。愛息が落涙して喜ぶ様子に「特別感を肌で感じました」と感慨深げだった。

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2021年7月30日のニュース