白鵬、日本人初V 圧倒的強さで千秋楽待たず「令和元年間に合った」通算43度目

[ 2019年11月24日 05:30 ]

大相撲九州場所14日目 ( 2019年11月23日    福岡国際センター )

通算43回目の優勝を飾り、付き人たちと笑顔を見せる白鵬(前列中央)(撮影・岡田 丈靖)
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 横綱・白鵬が関脇・御嶽海を外掛けで下して13勝1敗とし、千秋楽を待たずに4場所ぶりとなる通算43度目の優勝を決めた。令和になってからは自身初めて、9月の日本国籍取得後でも初優勝となった。34歳8カ月での優勝は年6場所制となった1958年以降で4番目の年長。九州場所では横綱・千代の富士に並ぶ最多9度目の優勝となり、東京、大阪、名古屋に続いて全4会場で優勝回数トップに立った。

 右外掛けで体を預けて御嶽海を仰向けに倒す。すぐに起き上がった白鵬は相手を助け起こしながら少し口角を上げた。「やっぱり勝って優勝が決まるのはいい」。千代の富士に並ぶ最多9度目の九州場所Vで「大先輩に近づいた」と喜んだ。前回優勝は平成最後の今年春場所だっただけに「令和元年に間に合って良かった」と頬は緩みっぱなしだ。

 かつてない意気込みで臨んだ。9月に日本国籍を取得。しかし日本人としての初優勝を期待された秋場所は2日目から休場。その無念を晴らすため序盤を体づくりに充てた過去数年とは違い、秋巡業は2日目の金沢市から三番稽古を敢行。その意図を問われても「(弟弟子の)炎鵬の地元だし石浦のおじさんも近くに住んでいるから」とけむに巻いたが、34歳という年齢も考慮した異例の早期始動だった。

 場所中も14日目朝まで稽古を皆勤。自宅からの通勤時間が必要な東京開催とは違い、九州場所は稽古場に隣接する宿舎で寝起きするため睡眠十分で回復は早い。しかも福岡県篠栗町にある宿舎は周囲にイチョウをはじめ多様な樹木が繁茂する自然豊かな環境。好天なら稽古後はまわし姿のまま日光を浴び「風がおいしい」とリフレッシュした。鍛錬の成果は張りのある体に表れ「筋肉量が増えたかも」と自信を取り戻し土俵を務めた。

 日本とのつながりを改めて確認する出来事もあった。春場所千秋楽の鶴竜戦で右上腕二頭筋を断裂し、その再建手術を受けた。医師から「ほとんど治らない」とさじを投げられる重傷にもかかわらず見事に回復。驚いた医師から血液検査などを勧められると、細胞小器官の一つミトコンドリアのDNAが「M7」タイプだと判明した。M7は縄文人の骨などからも採取されている型で約3000年前の日本人と同根であることが分かった。「(日本国籍を取得することで)“故郷に帰ってきたんだ”と興奮した」。千秋楽に賜杯を抱き、改めて喜びをかみしめる。

 《御嶽海を一蹴 ウルフの厳しさ》“ウルフ”の愛称を持つ千代の富士に九州場所の優勝9度で並んだ白鵬は、図らずもそれを意識する発言をしていた。

 20日の朝稽古後。日光浴しながら狼の話を始めた。「タスマニアタイガー(フクロオオカミ)の足跡が見つかったらしいね」。フクロオオカミは約80年前に絶滅したとされるが、近年はオーストラリアで足跡などの目撃情報が相次いでいる。

 モンゴル帝国を築いた英雄チンギスハンらの事績を記した歴史書「元朝秘史」で同族の祖先は狼とされる。この伝説の影響もあり、モンゴルで狼は神聖視され、白鵬は「縁起のいい生き物」と話す。19歳だった04年に母国の草原で夕刻に野生の狼を初めて目撃した。「緑色というか、青色というか、あの目が忘れられない」。同年九州場所11日目に横綱・朝青龍から自身唯一の金星を挙げた。

 フクロオオカミの足跡が見つかったニュースを白鵬が確認したのは約半年前。しかし自然に囲まれた宿舎で“狼の子孫”であることを思い出し、12日目遠藤戦のかち上げなど野性味を取り戻して優勝につなげた。

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